蜂窩織炎の発症に気候、気温は関係あるか
【序論】
蜂窩織炎は皮膚および軟部組織に発生する一般的な感染症である。多くの感染症には季節性があるため、今回蜂窩織炎の発症のリスクファクターにも気候や気温が含まれているのか疑問に思った。
【本論】
蜂窩織炎発症に対する天候の影響を調査した論文がある(1)。Peterson RAらは全米退院患者データベースを元に、1998年1月から2011年11月までに蜂窩織炎と診断され入院した患者と、国立気象データセンターの情報を元に気候、気温が蜂窩織炎発症に影響を与えるのかを調査した。
調査の結果、蜂窩織炎での入院の確率に対する気温の影響は強く、温度が5℉上昇するごとに3.55%増加した。今回の調査グループ内の最高気温のグループ(90℉)と最低気温である40℉未満のグループを比較した場合、50.9%(95%CI:[45.1,56.9])の蜂窩織炎での入院のオッズ増加が見られた。また気候に関連して、中西部、南部、西部の患者は北東部の患者より蜂窩織炎での入院の可能性低いことがわかった。気候や気温以外の蜂窩織炎のリスクファクターとして、年齢:40代の患者は18~30歳の患者と比べ入院の可能性が80.4%高い(95%CI:[78.6,82.1])ことや、蜂窩織炎での入院のオッズが糖尿病罹患患者で146%(95%CI:[143,148])、肥満患者で122%(95%CI:[121.124])高いことがわかった。
【結論】
上記の研究より、多くの感染症は冬季に発生率が増加するものが多いものの、蜂窩織炎はダニ媒介感染症などと同様に夏の暖かい時期に発症のピークを迎えることがわかる。今回の研究ではいくつかの制限がある。まず患者の居住場所を元に気候や気温をデータベーで参照しているため、実際に個々の患者がどのような空気条件で過ごしているかとの乖離がある。今後は個々の患者レベルでの気象暴露を推定する必要があると考えられる。また、入院患者を対象とし、軽症の蜂窩織炎患者を調査対象に含めていないため、重症度の低い症例などに一般化できないなどの問題もある。
また今回の研究は気温が蜂窩織炎発症と関連していると示唆しているものの、実際にどのようなメカニズムで気温の上昇が蜂窩織炎発症のリスクを上昇させているかは十分に解明されていないため、今後の研究で解明されることが期待される。
【参考文献】
(1)Peterson RA, Polgreen LA, et al, Warmer Weather as a Risk Factor for Cellulitis: A Population-based Investigation. Clin Infect Dis. 2017 Oct 1; 65(7): 1167–1173.
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