感染症内科BSLレポート
「がん発生と関連する細菌にはどのようなものがあるか」
<序論>
XXXそこで、がんの発生と関連している細菌にはどのようなものがあるかについて調べた。
<本論>
まず、胃癌についてである。胃癌は慢性的なヘリコバクターピロリ感染は胃癌の危険因子として知られている。しかし、その発生率は3%であり、胃における腫瘍形成に他の要因があることが考えられる。中国西安において表在性胃炎(SG)、萎縮性胃炎(AG)、腸上皮化生(IM)、胃癌(GC)を含む81症例及びモンゴルからの126例の粘膜サンプルの16SrRNA遺伝子分析を行い、粘膜微生物叢異常を検証した。結果としてはまず、SG、AG、IMの間に優位差がなかった口腔細菌の割合がGCと他のステージでは優位差がみられた(SG:p=0.018,AG:p=0.031,IM:p=0.0023)。また、Fusobacteria,Peptospreptococcus,Dialister,Mogibacterium属はSG,AG,IMよりもGCの方が多かった。GCでは21の細菌分類群が豊富で、Peptostreptococcus stomatis(q=0.03),Streptococcus anginosus(q=0.033),Slackia exigua(q=0.033),Diakister pneumosintes(q=0.033),Fusobacterium nucleatum(q=0.04)などがあった。
次に大腸癌である。香港において2006年1月1日から2015年12月31日まで癌の診断がなく菌血症で入院した13,096人の成人患者のデータを遡及的に研究し、大腸癌の発生率を暴露群と非暴露群(年齢、性別、合併症が一致する菌血症のない患者)で比較した。結果は、Bacteroides fragilis(HR=3.85,95%CI=2.62-5.64,P=5.5×10-12)、Streptococcus gallolyticus(HR=5.73,95%CI=2.18-15.1,P=4.1×10-4)、Fusobacterium nucleatum(HR=6.89,95%CI=1.70-27.9,P=0.7×10-3)、Peptostreptococcus種(HR=3.06,95%CI=1.47-6.35,P=0.3×10-3)、Clostridium septicum(HR=17.1,95%CI=1.82-160,P=1.3×10-2)、Clostridium perfrigens(HR=2.29,95%CI=1.16-4.52,P=1.7×10-2)、Gemella morbillorum(HR=15.2,95%CI=1.54-150,P=2.0×10-2)となり、これらの細菌において優位差がみられた。
<結論>
胃癌の発生にはStreptococcus anginosus, Peptostreptococcus stomatisなどの口腔細菌が大きく関与し、大腸癌ではBacteroides fragilis,Streptococcus gallolyticus, Fusobacterium nucleatumに加えClostridium perfrigens, Gemella morbillorumも発生に関与していることがわかった。これらの結果は細菌の存在を調べることが、癌の診断における非侵襲的なマーカーになる可能性を示唆している。
【参考文献】
- Thomas N. Y. Kwong, Xiansong Wang, et al. Association Between Bacteremia From Specific Microbes and Subsequent Diagnosis of Colorectal Cancer. Gastroenterology 2018; 155:383-390
- Coker OO, Dai Z, Nie Y, et al. Mucosal microbiome dysbiosis in gastric carcinogenesis. Gut 2018; 67:1024-1032
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