YSQ「Corynebacteriumによる肺炎はいかにして診断するべきか」
【序論】
ジフテリアを除くCorynebacterium 属は好気性のグラム陽性桿菌で,皮膚や口腔内の常在菌であるが,C.pseudodiphtheriticumやC. propinquumによるヒトへの感染症が報告されている。今回は担当患者がCorynebacteriumによる肺炎として治療されており、いかにして診断するべきなのか疑問に思った。
【本論】
院内肺炎は,入院48 時間以降に新しく出現した肺炎と定義づけられており、胸部異常陰影の出現に加えて,発熱,白血球数異常,膿性分泌物のうち2 項目を満たす症例を院内肺炎
と診断する。院内肺炎の原因菌の同定に喀痰のグラム染色が用いられ、Corynebacteriumにおいて、グラム陽性桿菌で両端が細くなるのが特徴である。呼吸器感染症に関わるグラム陽性桿菌は、ジフテリア菌、放線菌やノカルジアがあり、鑑別が必要である。放線菌やノカルジアとの鑑別点は、菌体が短い点と、配列が柵状、松葉状、Y字状などを呈する点である。
培養成績のみでは常在菌のグラム陽性桿菌として見過ごされる可能性があるので、本菌感染症の診断には,グラム染色で,グラム陽性桿菌に対する多数の好中球と好中球による菌の貪食像を確かめることが必要である。また、免疫機能が低下していたり、COPDなど呼吸機能低下が見られたりする場合は起因菌としてより考えるべきである。また、治療としてβ-ラクタム系が有効である。市中肺炎で発症した症例もあり、キノロン系抗菌薬で治療効果が乏しい場合には、本菌を考慮する必要がある。
【結論】
Corynebacteriumは基礎疾患をもつ患者での呼吸器感染症を起こす原因菌として認識し,グラム染色で本菌を疑うことが診断に重要であると考えられた。
【参考文献】
Corynebacterium pseudodiphtheriticum による呼吸器感染症の2 例
長崎大学医学部・歯学部附属病院臨床検査医学、森永芳智、2009/9/15
JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2014 -呼吸器感染症-
一般社団法人日本感染症学会,公益社団法人日本化学療法学会
JAID/JSC 感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会
A case of Corynebacterium pseudodiphtheriticum nosocomial pneumonia
Emerg Infect Dis., 5 (1999), pp. 722-723
コメント
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