骨折固定後感染(IAFF)のうち保存治療で加療可能なのは
どのような場合か?
<序論>
私の担当患者は、XXXそこで今回、骨折固定後感染 (以下IAFF)のうち保存療法で加療可能なのはどのような場合かについて調べた。
<本論>
まず、IAFFの治療法決定の上で、発症時期による分類が有用である。Early infection(固定後2週間以内)、Delayed infection(2~10週間)、Late infection(10週間以上)の3つに分類される。Early infectionでは原因細菌が形成するバイオフィルムが未成熟の可能性があり、全身性抗菌薬治療の効果が期待できる。一方で、バイオフィルムは時間経過とともに発達すること、感染が2~10週間で骨髄炎に波及することからDelayed infectionではインプラントの交換が必要となる。Late infectionでは感染領域周囲の骨膜性新生骨により被膜が形成され、感染巣を遮断する。よって、インプラントを保持し、インプラントおよび手術部位の洗浄、デブリードマンと抗菌薬の併用による保存治療を検討できるのは、Early infectionのみである。
早期の感染では骨接合構造物が安定している限り、感染症の有無にかかわらず骨癒合が達成されうることが報告されている。(1)Berkesらによると、手術骨折固定後6週間以内に感染症を発症し、創面切除術、抗菌薬およびインプラント保持で治療された患者において骨癒合を調査したところ、骨折治癒は71%の患者で達成された。開放骨折と髄内釘の存在が治療失敗の予測因子であった。(2)
早期感染の大部分では、保存療法が最善と考えられるが、インプラントの交換を考慮に入れるべき適応がある。髄内釘固定術、不安定な骨接合または不十分な骨折整復、軟部組織エンベロープ障害により十分な創傷閉鎖が得られない場合、患者の生理機能の低下(アルコール依存症、糖尿病、血管不全、喫煙)がある場合、病原体の治療が難しい場合は早期感染であってもインプラントの除去、交換を考慮すべきである。(3)
<結論>
今回IAFFの治療について比較検討した文献を見つけることができなかった。そこで、微生物学的な視点からIAFFの保存治療の可能性について検討した。骨折固定後2週間以内の感染で骨接合構造物が安定していて、インプラント・手術部位の十分な洗浄、デブリードマンを行うことができる場合、抗菌薬による保存治療が考慮されうるが、今後臨床的に予後を比較してIAFFの標準療法を確立していく必要がある。
<参考文献>
(1)Metsemakers WJ, Kuehl R, Moriarty TF, Richards RG, Verhofstad MHJ, Borens O, Kates S, Morgenstern M. Infection after fracture fixation: Current surgical and microbiological concepts. Injury. 2018 Mar;49(3):511-522.
(2)M. Berkes, W.T. Obremskey, B. Scannell, J.K. Ellington, R.A. Hymes, M. Bosse, et al.Maintenance of hardware after early postoperative infection following fracture internal fixationJ Bone Joint Surg Am, 92 (2010), pp. 823-828
(3)A. Trampuz, W. Zimmerli. Diagnosis and treatment of infections associated with fracture-fixation devices.Injury, 37 (Suppl 2) (2006), pp. S59-66
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