感染症内科 BSLレポート
日本における妊婦梅毒の治療はどうあるべきか
〈序論〉
XXX日本と海外で梅毒の治療法が異なるのか、また一般的な梅毒と妊婦梅毒で治療法が異なるのかについて調べた。
〈本論〉
まず、日本と海外での治療法の違いについて。国際的な梅毒(一期、二期)の標準治療はペニシリンGの筋注である。この治療法は一回の筋注で効果が得られるため、治療を中断してしまう患者が減るというメリットがある一方で、日本では過去にペニシリンアレルギーによるショック死の症例があるため、現在日本ではペニシリンGの筋注による治療は行われていない。日本における標準治療では、第一選択としてアモキシシリン1回500mg 1日3回を4週間投与する。早期神経梅毒の治療を重視し、プロベネシドを併用する場合もある。女性では、治療始め頃の発熱(Jarisch-Herxheimer反応)や、投与8日目頃から薬疹が起こりやすいため、留意する。第二選択は、日本ではミノサイクリン1回100mg 1日2回を4週間投与。CDCではドキシサイクリンが推奨されているが、日本では保険適用外である。また、テトラサイクリンは胎児に一過性の骨発育不全、歯牙の着色・エナメル質形成不全を起こすことがあるため一般的に妊婦には使用しない。第三選択は、スピラマイシン1回100mg 1日6回を4週間投与となっている。第二、三選択はペニシリンアレルギーのある場合に限り使用する。妊娠梅毒に対するアモキシシリンとプロベネシドの併用投与による治療効果について、二例の症例研究によると、先天性梅毒を発症することなく出産ができたことから、ペニシリンGの代替療法として考慮することができると結論づけられている。
次に、妊婦における梅毒の治療について。妊婦は妊娠初期の検診で梅毒の血清的スクリーニングが義務付けられている。そこで梅毒の感染が疑われた場合、治療は一般梅毒のステージ分類に合わせて行われる。一期、二期、および早期潜伏梅毒の妊婦に対しては、初回投与の1週間後に2回目のベンザチンペニシリン240万単位IMを追加で投与することが有効であるという報告もある。妊婦梅毒は、妊娠13週までは胎児に対する感染率が低いが、それを過ぎて未治療の場合は胎児が出生後に先天性梅毒を発症する確率が高くなるとされている。よって、妊婦健診で梅毒感染が疑われた場合は早期の治療介入が必要である。また、治療後もフォローアップとして最低妊娠28〜32週と出産時に血清学的力価の測定を実施する。
〈考察〉
妊婦梅毒では、胎児への感染による先天性梅毒を予防するために早期に治療を開始、完了させる必要がある。一方で、ペニシリンアレルギーによるショック死も大きな問題であるため、ペニシリン投与前にアレルギーの有無を評価し、安全性を確認しなければならない。今後日本においてペニシリンGの筋注が認可されるかは分からないが、いずれにせよ安全性と緊急性を天秤にかけながら治療を行うことが求められる。
〈参考文献〉
梅毒診療ガイド http://jssti.umin.jp/pdf/syphilis-medical_guide.pdf
Amoxicillin and Ceftriaxone as Treatment Alternatives to Penicillin for Maternal Syphilis.
Katanami Y, et al. Emerg Infect Dis. 2017.Emerg Infect Dis. 2017 May;23(5):827-829. doi: 10.3201/eid2305.161936.
CDC 2015 STD Treatment Guidelines Syphillis
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。