YSQ「尿道カテーテルを挿入することで術後感染のリスクはどのくらい高まるのか?」
【序論】私の担当患者はXXX術後感染症では尿道カテーテルから感染する場合も多い。
そこで術後に尿道カテーテルを挿入した場合としなかった場合で術後感染のリスクにどのくらい違いがあるのかという点に疑問を持ったためこのテーマについて調べた。
【本論】感染症診療マニュアル第3版によると尿路感染症(UTI)は敗血症の原因で最も考えられるものであり36歳以上の男性、65歳以上の女性においては尿道カテーテルの使用が危険因子とされている。今回読んだ論文は帝王切開中の留置尿道カテーテル留置の尿路感染症(UTI)への影響を調べることを目的としたランダム化比較試験であった。帝王切開を受けた妊娠女性420人をランダムに210人ずつカテーテル挿入群(CG)と非カテーテル挿入群(UG)に分けて行った。この論文では0.05未満の確立値(P値)は統計的に有意とされている。UTIは尿1mlあたり100個の大腸菌が存在することで臨床的に診断された。
結果UTI症状に関して2つの群の間に統計的に有意な差(P <0.001)がみられ、UTIの発生率はCGでは術後24時間で5.7%、術後1週間で2.9%であったのに対し、UGでは術後24時間で0.5%および術後1週間で0%(P <0.001)であった。この論文ではUG、CGそれぞれについて手術が全身麻酔で行われたのか局所麻酔で行われたのかについても比較しておりCGの全身麻酔を使用している女性で統計的に有意な増加があった。しかしそれでもなおUTIの発生率はCGにおいて有意に大きかった。
【結論】帝王切開においてUGとCGでは術後感染する可能性が大きく違った。やはり尿道カテーテルを挿入することは術後感染のリスクを何倍にも高めることになる。今回引用した論文は帝王切開に関するものであったため、その他の手術に関しての尿道カテーテルによる術後感染のリスクについては分からなかった。しかし尿道カテーテルの目的はただ導尿する目的で使われるだけなので、他の手術においてもリスクを高めると考えられる。尿道カテーテルは感染のリスクを踏まえ使用するかどうか精査した上で使用し、また使用した際には感染症の予防を行った上で注意深くモニタリングする必要があると考える。
【参考文献】
・感染症診断マニュアル第3版
・Evaluation of the use vs nonuse of urinary catheterization during cesarean delivery:
a prospective, multicenter, randomized controlled trial
Journal of Perinanatology (2009)29,416-421
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