バンコマイシン、リネゾリド、ダプトマイシンの中枢移行性にはどの程度差があるのか
【序論】
XXX抗菌薬の中枢移行性の違いに興味を持った。当初はMRSAを想定していたとのことで、代表的な抗MRSA薬について中枢移行性を調べようと思った。
【本論】
Ravina Kullarらの前向き研究によると、ダプトマイシン10mg/kg の単回投与後の平均髄液中AUCは血清のAUCの0.8%と著しく低値であったため、有効性は低いと考えられる。
長島悟郎らの症例報告によると、バンコマイシンのCSF浸透は血清濃度の約10%であるのに対し、CSFへのリネゾリドの浸透は、血清濃度のピーク値の58.9%およびトラフ値の133%であった。このことから、リネゾリドはバンコマイシンに比べ高い髄液移行性を示すことが分かる。
【結論】
ダプトマイシンは髄液移行性が低く、中枢神経感染症の治療には適さないことが分かる。
リネゾリドは高い髄液移行性を示し、バンコマイシンに比べ優れているという報告も増加
していることから、治療選択薬となりうる。
バンコマイシンは髄液移行性は乏しいものの、Pintadoらが86人の髄膜炎患者に対して行った後ろ向き研究によると、92パーセントの患者に対してバンコマイシンの投与が行われており、そのほとんどが良好な反応を示した。
このように、バンコマイシンはMRSA髄膜炎に対し有効であることが知られており、第一選択薬となる。
参考文献
・MRSA感染症の治療ガイドライン
・Pharmacokinetics of single-dose daptomycin in patients
with suspected or confirmed neurological infections. Antimicrob Agents Chemother 2011; 55: 3505-9
・Effect of linezolid against postneurosurgical
meningitis caused by methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis: case report. J Infect Chemother 2008; 14: 147-50
・Methicillin-resistant Staphylococcus
aureus meningitis in adults: a multicenter study of 86 cases. Medicine (Baltimore) 2012; 91: 10-7
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。