YSQ『アデノウイルスによる出血性膀胱炎の患者で、下痢を合併する頻度はどれくらいか。』
【序論】XXXみられる。出血性膀胱炎と下痢は別の原因によるものと考え治療方針が立てられているが、これらが同一の原因によって起こっているとは考えられないかという点を疑問に思ったため、このテーマを調べた。
【本論】アデノウイルスは51の血清型に分類され、アデノウイルス感染症は乳児、小児、免疫抑制患者においてみられる。中でも急性下痢症は40、41型で、出血性膀胱炎は11、21型が原因となることが多い。
S.P.Watcharanananらの2007年から2010年までにアデノウイルス感染症と診断された17人の腎臓移植患者に対する後ろ向き研究によると、出血性膀胱炎の症状である発熱、排尿障害、肉眼的血尿を有する患者はそれぞれ14、15、16人だった。また急性下痢を発症した患者は4人だった。
Alberto M. La Rosaらの1990年から1998年までに骨髄移植を受けた2889人に対する後ろ向き研究では、85人がアデノウイルス感染症と診断された。複数の症状が合併して見られたのは13人で、そのうち腸炎、出血性膀胱炎が見られたものはそれぞれ10、9人だった。
【結論】アデノウイルスによる出血性膀胱炎と下痢の合併頻度を研究した論文はなかった。しかし頻度の高い血清型が異なることに加え、上記の二つの研究結果からは出血性膀胱炎と下痢の合併頻度は低いと考えられる。そのため、それぞれの原因は別にあるとして検査、治療を行うのが適切である。
【参考文献】
・ハリソン内科学 第5版
・一般社団法人 日本感染症学会, 『感染症専門医テキスト 第Ⅰ部 改訂第2版』, 南江堂, 2011
・S. P. Watcharananan et al. Adenovirus Disease after Kidney Transplantation: Course of Infection and Outcome in Relation to Blood Viral Load and Immune Recovery: American Journal of Transplantation. 2011;11-6;1308-1314.
・Alberto M. La Rosa et al. Adenovirus Infections in Adult Recipients of Blood and Marrow Transplants: Clinical Infectious Diseases, 2001; 32-6; 871–876
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