腹腔内膿瘍に対してCTガイド下ドレナージと開腹手術ではどちらの方が予後はいいのか
【序論】
腹腔内膿瘍は抗菌薬のみでは治療がうまくいかないことが多く、ドレナージされないと死亡率は45~100%である。たいていの腹腔内膿瘍は経皮的ドレナージ(CT、超音波ガイド下)が可能である。ただし経皮的ドレナージが失敗した場合や解剖学的に安全に経皮的ドレナージができない場合、膿瘍が複数ある場合には外科的開腹術の適応となる。経皮的CTガイド下ドレナージと開腹手術を比較してどちらの方が予後はいいのか検討した。
【本論】
ハリソン内科学によると、明確な腹腔内膿瘍に対しては抗菌薬を併用して経皮的ドレナージを施行する。48時間までに解熱などの改善が認められず、さらなるドレナージに努めても排液や改善が認められない場合は外科的治療が考慮される。
Lauren M.B.Burkeらの後ろ向き研究によると、2002年から2011年までの間に消化管術後吻合不全による術後膿瘍とされた患者139人のうち27人に開腹手術、103人に経皮的画像下ドレナージを施行し比較した。その結果、開腹手術群では入院期間が長くなり(48 vs.32 days P=0.007)、経過診断に必要なCT検査数が多くなり(4.6±2.2 vs 3.4±2.0 P=0.006)、留置した経皮的カテーテル数も多くなった(1.8±1.1 vs 1.2±1.2 P=0.001)。また開腹手術群では退院した患者の割合が少なく(29.6% vs 49.5%)、死亡した患者の割合が多かった(29.6% vs 9.7% P=0.05)。
Ning Zhaoらの報告によると、2010年から2018年までの間に腹腔内膿瘍あるいは骨盤内膿瘍に対してCTガイド下ドレナージが施行された124人の患者のうち、膿瘍が完全に除去できた患者は115人(92.7%)、経皮的ドレナージに失敗した患者は9人(7.3%)、カテーテル非関連疾患によって死亡した患者は3人(2.4%)であった。よってCTガイド下ドレナージは安全で実行可能であると報告された。ただしこの論文に関しては開腹手術の予後とは比較していない。
【結論】
開腹手術と比較してCTガイド下ドレナージは患者の入院期間が短くなり死亡率も低下する。ただし、今回論文検討できたのは吻合不全による術後膿瘍のみであった。CTガイド下ドレナージのみを検討した論文では安全であり実行可能であると報告されていたが、開腹手術と比較して予後がいいのかどうかはわからない。術後膿瘍だけでなく腸管穿孔や既存の腹腔内臓器感染症などによる腹腔内膿瘍の予後について、CTガイド下ドレナージと開腹手術を比較して、さらなる考察が必要であると考えた。また担当患者では多発腹腔内膿瘍が認められ開腹手術が適応となるが、多発腹腔内膿瘍の予後について経皮的CTガイド下ドレナージと開腹手術を比較した文献が見当たらなかったためどちらの予後がいいのかわからなかった。多発腹腔内膿瘍に対するさらなる研究や考察が必要であると考えた。
(参考文献)
・ハリソン内科学第5版
・レジデントのための感染症診断マニュアル第3版
・Image-guided percutaneous drainage vs. surgical repair of gastrointestinal anastomotic leaks: is there a difference in hospital course or hospitalization cost? ;Abdom Imaging (2015)40:1279-1284
・CT-guided special approaches of drainage for intraabdominal and pelvic abscesses ;Medicine (2018) 97:42
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