YSQ「ソースコントロールのできないMRSA持続菌血症患者に対してリファンピン併用療法は有効か」
序論
MRSA持続菌血症で菌血症が持続する原因としては大動脈解離に対する手術後のグラフト感染を起こしており、このような血管内異物に対しては抗菌薬のの殺菌活性が低くなるからである。その場合デバイス除去が重要とされるが、年齢などの身体面を考慮するとデバイス除去を施行することは困難である。そこでリファンピンの併用療法が施行されている。本レポートではこのようなソースコントロールのできないMRSA持続菌血症患者に対するリファンピン併用療法の有効性について以下に挙げる論文を踏まえ考察していく。
本論
2012年から2016年にかけて英国で行われたARREST試験では黄色ブドウ球菌菌血症の成人758人が、標準的な抗生物質療法に加えて、リファンピン(1日当たり600 mgまたは900 mg;経口または静注)またはプラセボのいずれかによる2週間の治療群に無作為に割りあてられた。評価期間は無作為化から12週間。結果としては、リファンピン投与群とプラセボ投与群との間で死亡率または治療失敗率における有意差は認められなかった。しかしリファンピン投与群はプラセボ投与群よりも有害事象が多かった(63 [17%]対39 [10%]、p=0.004)。そして治療の障害となる薬物相互作用(24 [6%]対6 [2%]、p=0.0005)を持つ可能性が高かった。これらの結果から本研究ではリファンピン併用療法は無意味であるという結論に至っている。ただし本研究では人工心臓弁[n = 7]や人口関節[n = 7]などのデバイス留置下の症例数が少ないというlimitationがある。
結論
上に挙げた論文からはリファンピン併用療法は無効であるとされているが、limitationを考慮するとリファンピン併用療法を一概に否定することはできない。また、MRSA持続菌血症患者に対してのリファンピン併用療法については本論文以外にも有効とするもの無効とするものが様々存在している。今後更なる調査を行う必要がある。
参考
MRSA感染症の治療ガイドライン2017年改訂版 日本化学療法学会
Thwaites GE,et al.Lancet.2017:Adjunctive rifampicin for Staphylococcus aureus bacteraemia (ARREST): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
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