感染症内科BSLレポート
「骨髄炎に対する抗菌薬の投与期間を何日に設定すべきか」
【序論】
骨髄炎は再発も多く、抗菌薬投与をいつまで続けるべきか検討する必要があると考えた。
【本論】
〈ハリソン内科学 第5版〉
長管骨について、体内に人工物の留置がない症例では4〜6週間の抗菌薬投与が推奨されている。初期に抗菌薬の静脈投与を行い(抗菌薬の生物学的利用率が良好であれば、静脈内投与は2〜3日の短い期間で良い)、経口での抗菌薬投与を行う。抗菌薬を4〜6週以上投与しても、回復率の改善や、再発率の低下は見られない。
〈Up to date〉
・感染骨を完全に除去せず残っている場合の抗生物質療法の最適な期間は不明。少なくとも創面切除された骨が血管新生した軟組織で覆われるまで抗菌療法を継続することがほとんど(通常最後の創面切除から少なくとも6週間)である。
・体内に人工物を留置していない患者は、長期間の静脈内抗生物質療法を行うべきである。少なくとも創面切除された骨が血管新生軟組織で覆われるまで抗菌治療を続ける(通常最後の創面切除から少なくとも6週間)。
〈感染症診療マニュアル第3版:青木眞 著〉
治療期間を検討した研究はないとされる。デブリドマン後、骨が血管に富んだ軟部組織に覆われるまで6週間かかるとされ、かつ治療期間が短いと再発が多いため、治療期間は一般的に6〜8週間(最低でも4週間))。血流が乏しい部位では通常より長めに設定し、必要に応じて12週間まで延長する。また下記に骨髄炎の誘因別に治療期間の目安を提示する。
・高齢者、血液透析などでの血行性骨髄炎:4〜6週を超えて治療しても効果は変わらないとされる。
・慢性骨髄炎:デブリドマン後4〜6週間静脈投与し、さらに8週間以上経口で投与。
以上の内容の妥当性を支持するため論文を検索したが、エビデンスや対象患者の面で本症例に適したものを見つけることができなかった。
【結論】
抗菌薬の投与期間は6週間で良い。本症例は骨髄炎の病変部の範囲は狭く、またデブリドマンを鏡視下手術で行なっており、骨を血流に富んだ軟部組織で覆うのに4週間あれば十分だと考えられる。そのため抗菌薬の投与期間は最低4週間以上である。また、本論より投与期間は長くとも6週間で良いと考えられる(それ以上やっても効果は変わらない)。しかし、4週と6週で再発率に差が出るかは検討されておらず、また本症例はステロイドを内服しているため、再発のリスクは高いと思われる。そのため抗菌薬の投与期間は6週間とすべきである。
【参考文献】
・ハリソン内科学 第五版:p864-867
・レジデントのための感染症診療マニュアル 第三版:p851-869:青木眞 著:2015年 医学書院出帆
・Osteomyelitis in adults: Treatment:Douglas R Osmon, MD・Aaron J Tande, MD:Feb 28 2019
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