感染症内科BSLレポート
「院内肺炎患者に対し初期治療としてピペラシリン/タゾバクタムを投与した場合とセフェピムを投与した場合とで生命予後に差は出るのか?」
【序論】
喀痰検査でグラム陰性桿菌が検出された院内肺炎疑いの患者に対し、初期治療としてピペラシリン/タゾバクタム(P/T)が投与されているのを見て、その代替薬となり得るセフェピム(1)を投与する場合と生命予後に差は出るのか疑問に思った。
【本論】
Böhme Aらによると、好中球減少症の100症例におけるランダム化比較試験ではグラム陽性菌感染はセフェピムよりもピペラシリン/タゾバクタムでより高い反応を示した。(0/8対4/9)(2)
また、James R. Beardsleyらによると、2004年7月から12月の間に院内肺炎に罹患し、細菌性病原体の陽性培養所見を持った111人の患者における分析ではピペラシリン/タゾバクタムおよびセフェピムに対するグラム陰性菌の感受性は、それぞれ80%および81%であった。(3)
さらに、Ambrose PGらによると、2000年における1,909の大腸菌と743の肺炎桿菌血流分離株の分析においてESBL産生大腸菌および肺炎桿菌はピペラシリン-タゾバクタムよりも16倍セフェピムに対して感受性が高かった。(4)
【結論】
以上より、グラム陽性菌感染ではピペラシリン/タゾバクタム、ESBL産生大腸菌および肺炎桿菌ではセフェピムがそれぞれより有用、グラム陰性菌感染では同程度であることがわかり、院内肺炎の初期治療においても同じ結果となることが考えられるが、それにより生命予後にどの程度影響を与えるかの文献が見つからなかったため、さらなる研究、考察が必要であると考える。
参考文献
- 亀田感染症ガイドライン
- Böhme A,et al. Piperacillin/tazobactamversus cefepime as initial empirical antimicrobial therapy in febrile neutropenic patients: a prospective randomized pilot study. Eur J Med Res. 1998 Jul 20;3(7):324-30.
- James R.Beardsley,et al. Using local microbiologic data to develop institution-specific guidelines for the treatmentof hospital-acquired pneumonia. 2006 Sep;130(3):787-93.
- AmbrosePG,Pharmacokinetics-pharmacodynamicsof cefepime and piperacillin-tazobactam against Escherichia coli and Klebsiella pneumoniae strains producing extended-spectrum beta-lactamases:report from the ARREST program. Antimicrob Agents Chemother.2003 May;47(5):1643-6.
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