肝移植後の患者はどのような感染症にかかりやすいか
私の担当患者はXXX ほかに肝移植によってどのような感染症がおこりやすいかをテーマにした。
肝移植後の感染症は原因の60〜70%が細菌であり、肺炎・創感染・腹腔内膿瘍・尿路感染・静脈ラインの感染が多い。細菌性腹膜炎は複数菌が関与し、また他の臓器移植に比べて真菌感染症の頻度が高く、15〜42%を占めている。Candidaが主な真菌であったが最近はAspergillusやほかの糸状真菌、Cryptococcusも増加傾向にあり、真菌感染での死亡率は25〜82%と重篤である。多くの施設ではあきらかな感染がなくても広域抗菌薬の予防投与が行われているが、感染症合併症は一般的にみられる。またウイルス性肝炎が再燃することもあるので抗ウイルス剤と抗B型肝炎免疫グロブリン製剤を併用することが推奨されているが、適切な投与量や治療期間についてはまだ明確に定まっていない。
ある論文では1984年7月から1985年9月の間に肝移植を受けた101人の患者で平均394日間、感染症の頻度を調べたところ、83%が1回以上の感染症を発症し、67%が重篤な感染症であった。全体の死亡率は26/101(26%)で、そのうち23人(88%)が感染に関連していた。重篤な感染症の70%が移植後の最初の2ヶ月に発生した。重症感染症のうち頻度が高かったものは、腹部膿瘍、細菌性肺炎、侵襲性カンジダ症、ニューモシスティス肺炎、サイトメガロウイルス感染症であった。累積手術時間が12時間を超える患者は、重症感染症、特に真菌感染および細菌感染の割合が高かった。(P <0.001)また、患者は標準免疫抑制剤としてシクロスポリンとコルチコステロイドを投与していたのだが、腎毒性のためアザチオプリンを投与された患者や拒絶反応のためステロイドを増量した患者では感染は増加しなかったが、拒絶反応の治療としてOKT3療法を受けた患者は原虫感染率が高かった(P <0.05)。重篤な真菌感染症は移植後の抗生物質の投与期間とかかわっていることもわかった(P <0.001)腹水症、脳症、消化管出血などの重症肝疾患の移植前症状と移植後の感染率は関連していなかった。
重篤な感染症の一つとして挙げられるなかでも特に肝移植に多い真菌症に対しては、特にハイリスク群は手術前に抗真菌薬の予防投与が必要となる。ハイリスク群とはCr>2mg/L、長い手術時間、再移植、手術時のカンジダ定着がみられる、グルココルチコイドの術前使用がある。長期間抗菌薬を投与されている患者であり、一般的にミカファンギン・アムホテリシンBリポソーム製剤・アムホテリシンBの予防投与を行なっている。
ほかにも、再移植が必要になることは少ないがCMV肝炎も約4%にみられ、抗体陽性ドナーの臓器を抗体陰性レシピエントに移植する際にはCMV感染症はほぼ起こるということからも、予防のためガンシクロビルや高容量アシクロビルなどの抗ウイルス薬を投与されている。PTLDは肝移植における発症率は1~2%であるが予後不良であるためEBV既感染者には予防・先制治療のためリツキシマブを375mg/m²/回で1~4回投与される。
肝移植後には上記のような様々な感染症のリスクがあり、シクロスポリンなど一般的に用いられる免疫抑制剤以外にも感染予防策を適切に行い、発生した感染症に対しての早期治療が必要であると考える。
参考文献
感染症診断マニュアル第3版
ハリソン内科学第5版
Infections after Liver Transplantation An Analysis of 101 Consecutive Cases
Kusne S, Dummer JS, Singh N, et al.
造血幹細胞移植ガイドライン EBウイルス関連リンパ増殖症
寸評 肝移植後って本当に感染症多いですよね。出典はよく読みましょう。
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