よしながふみの「きのう何食べた?」はお気に入りの漫画です。
ついにドラマ化しましたね。関西だと数日遅れなのですが、これが実に素晴らしい。
昔は漫画原作の実写ドラマとか、がっかりな作品が多かったものですが、隔世の感があります。ゲイのカップル役の両主役の演技の見事なこと。意外なところで梶芽衣子が出ていて二度びっくり。
で、それはいいのですが、ぼくは筧史朗にけっこう共感しています。料理好きなところもそうなのですが、スーパーで安い食材を追求する態度にとても共感。そういえば、気がつくとぼくも連載開始当初の筧先生の年齢(45)を大きく超えてしまいました。そりゃ、老眼鏡が要るわけだよ。
で、本題。食と健康に関する本を3冊出しました。1冊は「ワイン」が主題ですが、考え方は同じです。
それは、「規則正しい食事はからだによくない」です。
ぼくの食と健康の考え方は、「科学的」であることが大事だという考え方です。
科学においては実証、すなわちデータが大事です。観念や主張や思い込みよりも実在するデータのほうが優先される。ビタミン剤は体に良い、という「観念」は「ビタミン剤を飲んでも健康指標は改善しない」というデータにはかなわないのです。以下の話も支持するデータや論文がありますが、それは全て上記3冊のなかに出典ございますのでご参照ください。
で、データは「現存するデータ」も大事ですが、「将来現れるかもしれない、現在存在しないデータ」も大事です。後者を無視してはいけません。なぜなら、絶対に「今無いデータ」は存在するのであり、それは将来やってくるからです(嘘だと思うなら、科学史をちょっと紐解いてみてください)。
例えば、「卵にはコレステロールが入っていて、体に良くない」みたいな話を聞いて、卵を一切食べない、なんて態度をとってはいけません。そうこうしているうちに、「卵を食べても健康に害はない」という新たなデータが発表されます。かといって、急に朝から晩まで卵ばかり食べるみたいな食生活に変じてもダメです。ほら、新しい論文が出て「やっぱ、卵の食べ過ぎはからだに悪いよ」みたいな話になるのです。
ぼくはファイナンシャルプランナーでもありますが、金銭リスクは分散して管理するのが基本です。トランプが大統領になるとかブレクシットとか年号が変わるとか、数年前は全く予測されていませんでした。でも、そういう予測外のことは起きるのです。予測外のことが起きる、と予測しておくことが大事です。蛇足ですが、これ、医学医療における患者ケアにおいても同じです。
食と健康についても同じです。一つの固定された食事方法=ダイエット、に固執していると、その方法がコケたときに、大負け=不健康、のリスクをかぶらねばなりません。ビタミンも蛋白も炭水化物も、とりすぎも取らな過ぎもよくないのです。なま物は感染症リスクがありますが、かといって火を通しすぎた食べ物は栄養価が落ちたり、発がん物質のリスクを伴います。バランスよく、食のリスクを分散するのは大事なのです。
では、具体的にどうするか?
いろいろ方法はあるのですが、ここでは一番カンタンな、「インプットと、アウトプットで考える」方法をご紹介します。これは僕自身が採っている方法でもあります。
その前に、前提がいくつかあります。
1.自炊する。
コンビニや惣菜や外食はどうしても食事が単調になりがちですし、健康という観点からはあまりオススメできません。シンプルな料理で良いので、自炊する習慣をつけると、健康にはぐっと近づきます。ま、三食すべて自炊は大変ですから、ここでもそう極端にする必要はありません。かくいう僕の今日の昼飯もコンビニで買ったカップ麺とおにぎりです(笑)。健康データのほとんどは「コンスタントにとりつづけた食の影響」からできています。たまに、不健康なジャンクな食べ物を食べるくらい、どってことはありません。まじで。
2.一人で食べない。
家族がある人は自宅で家族一緒に、一人暮らしの人は友人たちと食べるのがおすすめです。理由は「楽しい」からでもありますが、「ゆっくり食べる」ことができるからです。一人食いはどうしても早食いになります。世界でもっとも堅牢なエビデンスを持つ健康食は地中海食ですが、地中海食の「どこ」が健康に良いのかは完全には分かっていません。が、仮説としては、「みんなと楽しくゆっくり食べる」という要素がそれに寄与している可能性があると僕は思っています。
で、いよいよ本題のインプットとアウトプットです。
3.インプット
スーパーの特売品を買う。
マジです(笑)。特売品は当然安いのですが、旬のものになる可能性が高い。春の春野菜、秋の秋刀魚など。特売品を中心に買えば、当然コスパはよいですし、食の多様性は何も考えなくてもかなり担保されます。コンスタントに同じものが特売されることはありえないからで、そもそもそういうものは「特売」とは呼ばない(笑)。
僕の方法としては、「果物」「野菜」「魚」「肉」「その他」でスーパーを一巡して、特売品を中心に買っていきます。これで、かなり多様性が担保されます。
献立から買うものを決めるのではなく、安いもの(旬のもの)を中心に買うので、あとはクックパッドとかクラシルさんにお願いして献立を決めます。そうすると、和食、中華、イタリアン、スパニッシュなど、多様なおかずを作ることができます。献立中心だと、忙しい勤め人だとついつい同じようなメニューに陥ってしまうのですが、食材からネットにお願いすれば、いろいろ新しい多様なおかずにたどりつけます。これは食材やおかずに対する高い感受性や好奇心を保つのにも有効です。
もちろん、安かろう悪かろうな食材もあるので、スーパーの吟味や食材の吟味も大事です。たとえ安くても、スカスカのきゅうりやしなびたじゃがいもをつかまされたときは、がっかりです。ですので、「目利き」は必要になるのですが、目利きをするためにはやはり経験値が大事になるのです。
こうやって、スーパーを選び、食材を選び、コストを吟味するという「主婦力」を養います。これが多様で「規則正しくない」健康な食事を担保するのです。うーん、筧史朗さんに共感するのは当然ですね!
最後に、
4.アウトプット
です。これは冷蔵庫から取り出す食材です。そろそろ賞味期限切れな食材や調味料を取り出して、やはりクックパッドやクラシルにおかずを選んでもらう。冷蔵庫のアウトプットを上手にやれば、食べ物を腐らして捨てるというもったいないことをしなくてすみますし、ここでも食の多様性を担保してくれます。
もちろん、完全に献立計画を立てて、カロリー計算をして、きっちりかっきり栄養管理をするという管理栄養士的、プロフェッショナルな方法もあるでしょう。でも、多くの勤め人はそんな面倒なことはできませんし、やっても続きません。持続可能なことはとても大事なのです。できない理想食は絶対に健康を導きませんから。それに、かっちりきっかりな食事というのは、コストが高く付きがちです。安上がりに結果を出す、コスパを意識するというのは、(人口が減って、いろいろシュリンクしていく日本社会における)これからの健康や医療においてはとても大事な要素だと僕は思います。
詳しいことは上の三部作に書きました。ご参考になれば幸いです。
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