今回から、レポート注は省略します(省力化のためです)。詳しくは過去のブログをご覧ください。
ICD感染の治療期間は?
不整脈治療の一環としてICDを植え込むことがあるが、合併症として感染が一定の割合で発生する。今回担当した患者は、ICDリード交換後に創部感染をきたし、バンコマイシン投与と外科的にICD抜去予定の方だった。そこで、ICD感染の治療期間はどのように決定され、またどの程度の期間が必要になるのかを考察する。
ICD感染の基本的な治療方針は、起因菌の同定、抗菌薬投与、感染したICDの抜去である。[1]
ICD感染を疑った場合、血液培養を出した後から抗菌薬投与を開始する。ICD感染の起因菌としては黄色ブドウ球菌とコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が75%を占めるため[2]、それらをカバーするためにバンコマイシンを静注する。起因菌を同定後、適切な抗菌薬を再度検討する。投与期間については4-6週間継続するべきとされていた[3]。しかし、その根拠となる研究論文を見つけることはできなかった。
外科的にデバイスを抜去した後は、最低でも2週間は抗菌薬を非経口的に投与ことが推奨されている[4]。新しいデバイスをすぐに埋め込むことは新たな感染を引き起こす要因となるため避けるべきで、培養結果が陰性を示してから最低72時間、弁膜症の痕跡がある場合は最低でも2週間の間隔をあける。しかし、抜去から新しいICD再埋込みまでの期間を明確に定めた研究論文は見つからなかった。
また、再埋め込みに感染等のリスクが伴うため、多くの症例では再埋め込みは不要であるという報告もあった。[5]
以上より、治療期間の決定においては、患者の年齢、合併症、培養結果等に応じて可能な限り個別化されるべきと考える。
[1] Sohail MR, Uslan DZ, Khan AH, Friedman PA, Hayes DL, Wilson WR,
Steckelberg JM, Jenkins SM, Baddour LM. Infective endocarditis complicating permanent pacemaker and implantable cardioverter-defibrillator infection. Mayo Clin
Proc 2008;83:46–53.
[2] 青木眞, レジデントのための感染症マニュアル第三版, 医学書院
[3] BADDOUR, Larry M., et al. Update on cardiovascular implantable electronic device infections and their management: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation, 2010, 121.3: 458-477.
[4] HABIB, Gilbert, et al. 2015 ESC guidelines for the management of infective endocarditis: the task force for the management of infective endocarditis of the European Society of Cardiology (ESC) endorsed by: European Association for Cardio-Thoracic Surgery (EACTS), the European Association of Nuclear Medicine (EANM). European heart journal, 2015, 36.44: 3075-3128.
[5] . Grammes JA, Schulze CM, Al Bataineh M, Yesenosky GA, Saari CS, Vrabel MJ,
Horrow J, Chowdhury M, Fontaine JM, Kutalek SP. Percutaneous pacemaker
and implantable cardioverter-defibrillator lead extraction in 100 patients with intracardiac vegetations defined by transesophageal echocardiogram. J Am Coll Cardiol 2010;55:886–894.
言葉足らずだったり、命題にフィットしなかったとこもありますが、最初はこんなものでしょう。治療期間問題は身近なくせに、難しい問題です。
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