感染性心内膜炎の心不全症状を持つ手術はどのタイミングで行うことがベストか。
【序論】
今回私が担当した患者さんは人工弁の感染性心内膜炎疑いの方であった。当初抗菌薬による治療が行われていたが、心不全徴候があるため血液培養の結果を待たず手術をされることになったので感染性心内膜炎の手術時期をどのように定めるべきかいかに考察する。
【本論】
ハリソン内科学第五版を参照するとNYHA分類のⅢ、Ⅳ期に分類されなおかつ急性大動脈閉鎖不全または僧帽弁閉鎖不全を伴う患者は1-2日以内に手術が強力に支持されると記載されている。
Tool Kieferは心不全を合併する4075人の患者のデータに基づく研究では1359人の心不全合併患者のうち906人がNYHA分類のⅢ、Ⅳ期に分類され、手術を行った患者が20.6%院内で死亡したのに対し、薬物療法のみの患者は44.8%死亡した。また1年後の死亡率も手術を行った患者が29.1%なのに対し、薬物療法のみの患者は58.4%であった。また、重症心不全、黄色ブドウ球菌または真菌による感染性心内膜炎、高齢、糖尿病、脳卒中などの合併症は独立して一年死亡率と関連しており、最初の入院時の弁手術はより低い死亡率と関連しているとわかった。
G Habibらが2003年1-3月にDukeの診断基準を満たす104人の患者を対象にPVEの治療に関する調査を行った。これらの患者は抗菌薬による4-6週の治療が予定されており、主治医の判断により手術が行われた。手術は51人の患者に対して行われ、27人の患者が感染性心内膜炎の診断から15日以内に手術を行った。この研究の結果は重度な合併症(重症心不全、全身の塞栓症後の巨大疣贅、弁周囲膿瘍など)を伴うPVE、スタフィロコッカス族によるPVEは早期手術による治療をした方が予後が良いとされ、この研究はランダム化されていないなどの制限があるにせよ(このような研究では完全なランダム化は不可能に近い)、以前の研究より感染性心内膜炎の定義がしっかりとなされた状態でなされている。
【結論】
重症の心不全患者にたいしてはできるだけ早期に手術による治療を行うべきであることは人工弁の感染性心内膜炎でも、生体の感染性心内膜炎でもかなり高いエビデンスレベルで推奨されていると言える。また軽症の心不全でも、スタフィロコッカス族による感染性心内膜炎と判明している場合は早期手術をするべきだ。
G Habibらの研究では4-6週間以内の手術においての手術は予後がよくそれらの患者の50%以上は15日以内に手術が施行されていたが、15日以内に手術を行った患者とそれ以降に手術を行った患者で予後の違いが言及されていなかったため、15日という日数との相関はわからなかった。
【参照】
ハリソン内科学 第五版
Association Between Valvular Surgery and Mortality Among Patients With Infective Endocarditis Complicated by Heart Failure
Todd Kiefer, MD, PhD, Lawrence Park, PhD, [...], and for the ICE-PCS Investigators
Prosthetic valve endocarditis: who needs surgery? A multicentre study of 104 cases
G Habib, C Tribouilloy, [...], and D Raoult
これについてはNEJMのメジャーな論文を検索するという体験をしましたね。定期的にメジャージャーナルに目を通しておくのも大事です。
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