壊死性筋膜炎と蜂窩織炎の鑑別において重要なことは何か
初期の壊死性筋膜炎は蜂窩織炎と臨床像が類似しており、鑑別がしばしば困難である。しかし壊死性筋膜炎は急速に進行し、治療を行わなければ致死的な感染症であるため、早期に診断する必要がある。
蜂窩織炎は限局性の疼痛、紅斑、腫脹、熱感、発熱によって特徴づけられる。皮膚所見は異常が目立つが、痛みは軽度から中等度にとどまる。
壊死性筋膜炎の初期の症状としては腫脹、紅斑が挙げられる。これらは初期では見られないことも多いが、圧痛は強い。進行すると皮膚所見の領域を超える疼痛、見た目と不相応な痛み、斑状出血、水疱、壊死、握雪感、皮下ガスがみられる。全身状態としては、発熱、頻脈、血圧低下、意識障害が挙げられ、さらに進行すると腎不全からショックに至る。これらの所見はNSTI(壊死性皮膚軟部組織感染症)にかなり特異的であるが感度は10-40%と低く、これらがないからといって除外はできない。
Wallらの後ろ向き研究によると、WBC>15400/mm3または血清Na<135mmol/LであることがNSTIと関係し、両者を満たすことでNSTIの可能性が高まる。これは陰性的中率(NPV)99%と高いが、陽性的中率(PPV)は26%と低い。一方、WongらはNSTIと非壊死性軟部組織感染症を区別するためのスコアを作成した。6つの項目において、それぞれの値に対し点数をつけた(①CRP <150mg/Lで0点、>150mg/Lで4点 ②WBC<15000/mm3で0点、15000-25000/mm3で1点、>25000/mm3で3点 ③Hb>13.5g/dLで0点、11-13.5g/dLで1点、<11g/dLで2点 ④Na>135mmol/Lで0点、<135mmol/Lで2点 ⑤Cr<1.6mg/dLで0点、>1.6mg/dLで2点 ⑥血糖<180mg/dLで0点、>180mg/dLで1点)。研究の結果、この点数が6点以上の場合、NSTIのリスクが高いことがわかった。これはPPVが92%、NPVが96%と共に高いが、重度の軟部組織感染と診断された、または強く疑われる場合でなければ有効ではない。このように壊死性筋膜炎の診断は、身体所見、バイタルなどの臨床的な手がかりとWallやWongらが作成した診断ツールから総合的に判断して診断する必要がある。
これらにより少しでも壊死性筋膜炎が疑われたならば、早期の外科処置が診断上も治療上も適応となる。切開により筋肉そのものに病変を認めず、筋膜壊死と、筋膜面上および筋肉群間に貯留する炎症性滲出液を確認することができれば、壊死性筋膜炎と診断できる。
以上のことから、壊死性筋膜炎と蜂窩織炎は臨床的所見と診断ツールを総合的に考え早急に鑑別し、少しでも壊死性筋膜炎が疑われる場合は外科的処置を行うことが重要である。
【参考文献】Necrotizing Soft-Tissue Infection: Diagnosis and Management Ellie J. C. Goldstein Daniel A. Anaya E. Patchen Dellinger
ハリソン内科学第5版
ハリソンを読んだのは偉かったです。まずはオーセンティックな教科書を読むこと。これは大事な筋道です。時間がないときは特に。壊死性筋膜炎のポイントは時間です。上記のスコアリングは時間情報がない、という点に気付くと大きな理解が深まります。
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