注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、火曜日のお昼まで、5時間かけてレポート作成します。水曜日などに岩田がこれに講評を加えています。2019年2月11日よりこのルールに改めました。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、間違いもありますし、個別の患者には使えません。レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
膿瘍の治療期間をどのようにして決めるのか
今回、担当した患者は、口腔内常在菌により左扁桃周囲膿瘍、頸部膿瘍、縦隔膿瘍のある患者で、スルバシリンで治療していた。
そこで膿瘍の治療期間をどのように定めるのかを考えた。
扁桃周囲膿瘍の臨床的評価を考える。まず、白血球について、膿瘍では多形白血球優位に白血球数が上がるが、これは非特異的である。ほかに、定期的な膿の培養、頸部のCTが評価法としてあげられる。治療期間については、一般的には、臨床的徴候あるいは放射学的特徴が解消されるまでとされている。従って、膿の培養と頸部のCTにより、治療期間を定めることが適当であると考えた。
CTの診断の正確性について考えた。
1 扁桃周囲膿瘍と診断された24人の患者をCTを受けながら治療するグループA(13名)とCTを受けずに治療するグループB(11名)に分けて調査する。グループAでは11人の患者(85%)に膿瘍を示したためにドレナージする必要が証明され、2人のドレナージする必要がない患者に対して抗菌薬のみでうまく管理された。グループBでは、全員穿刺を行った。7人の患者(64%)が穿刺を行った後に膿が示され、1人の患者が2箇所の穿刺の後に膿が示された。3人の患者(27%)が3箇所の穿刺の後に膿が示された。
2 膿瘍と培養検査により診断された患者について、CTの画像所見と膿瘍の関係性を調べた。円周の50%以上のリング状の所見は54%の感度、71%の特異度、62%の正確性があった。重度の軟部組織症状は、39%の感度、92%の特異度、64%の正確性があった。
以上から、治療期間を考える時の手順として、血液検査の結果を見て、白血球数が減少すれば、CTの画像所見をみていくことが必要と考える。
参考文献
1Ellen R Wald, MD . Perionsillar cellulitis and abscess . Nov 15,2017
2Charles W Stratton, MD . Infections due to the Streptococcus anginosus (Streptococus milleri) group . May 22,2018
3Yoon SJ , Yoon DY , Kim SS , Rho YS , Chung EJ , Eom JS , Lee JS .CT differentiation of abscess and non- infected fluid in the postoperative neck. Acta Radiol. 2013 Feb 1;54(1):48-53. doi: 10.1258/ar.2012.120505. Epub 2012 Oct 22.
4 Patel KS1, Ahmad S, O'Leary G, Michel M. The role of computed tomography in the management of peritonsillar abscess. Otolaryngol Head Neck Surg. 1992 Dec;107(6 Pt 1):727-32.
治療期間問題は常に難しいですが、膿瘍の治療期間は特に難しい。難しい、という一点が分かっていただければ結構。簡単に感染症を扱う医者は多すぎますから。
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