注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
「持続する発熱以外にステントグラフト感染の指標となる所見はあるか?」
大動脈瘤の治療などに用いられたステントグラフトが術後に感染を起こすことがある。その発生率は0.4~3%であり、それに関連した死亡率は25~50%である。ある論文によると、術後からステントグラフト感染の発症までにかかる期間の平均値は20ヶ月であった。(1)
術後20ヶ月もの期間が過ぎたときに、ステントグラフト感染を発見するきっかけとなる身体所見が、持続する発熱以外にあるのかが気になったので、今回のテーマとした。
ステントグラフト感染の診断基準に関する論文では、身体所見やCT、血液検査などを組み合わせて診断するという結果が得られた。身体所見として、ステントグラフトが露出した開放創や、体表に開口する瘻孔、腸炎や熱感、腫脹、膿の排出、痛み、38℃以上の発熱(最多)が挙げられていた。(2)
イタリアのステントグラフト感染患者における、疫学、危険因子、診断、治療に関する報告がある。EVERを受けた約3万人の患者のうち、発症した患者26人が登録された。その結果、感染症の臨床症状(割合)は、発熱が21人(80.7%)、体重減少が23人(88.4%)、衰弱が24人(92.3%)、拍動性腫瘤が5人(19.2%)、血便が5人(19.2%)、吐血が1人(3.8%)であった。(3)
今回のレポートでは、ステントグラフト感染患者における身体所見の感度と特異度を記載している論文を見つけることができなかった。また、(3)の論文は症例数が少ないため、その数値は信頼できない。したがって、この2つの論文では、テーマに即した身体所見を見つけることができなかった。術後は身体所見がなくても、定期的に採血やCT検査を組み合わせたフォローを実施したほうがいい。
(1)Rabih A Chaer,MDほか(2017)『Complications of endovascular abdominal aortic repair』UpToDate
(2)O.T.A.Lyonsほか(2016)『Diagnosis of Aortic Graft Infection:A Case Definition by the Management of Aortic Graft Infection Collaboration(MAGIC)』European Journal of Vascular and Endovascular Surgery Volume52,issue6, December 2016, Pages 758-763
(3)Laura Capocciaほか(2015)『Preliminary Results from a National Enquiry of Infection in Abdominal Aortic Endovascular Repair(Registry of Infection in EVAR—R.I.EVAR)』Annals of Vascular Surgery Volume 30, January 2016, Pages 198-204
寸評:結語が全く意味不明だし、そもそもタイトルの回答になっていません。ちょっと失敗しましたね。難しいテーマのときには、分からないことそのものが回答になることも多いのです。
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