注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
「蜂窩織炎とDVTにはどのような相互関係があるか、
またそれを理解することは患者にどんな利益をもたらすか」
蜂窩織炎とDVTは臨床的に類似点をいくつか持ちしばしば鑑別の対象として比較されるが、この2つの疾患の相互関係や合併のリスクがあるのかについて今回疑問を持ち調べることにした。
蜂窩織炎の診断を受けた入院後48時間の患者200人のうちDVTの有病率を調査した研究では、DVT高リスクの患者は41人で、さらに同側のDVTだと診断されたのはそのうち1人(0.5%)であり、低リスク群では0人であった。一方で国立長寿医療研究センターが高齢者1000人を対象とした臨床研究ではDVTと肺塞栓を合わせた有病率は0.184%であり[4]、蜂窩織炎患者では通常に比べてDVTが発症しやすいと言えるが、患者対象者の違い(入院後の時間や200例は母数として少ない)や肺塞栓が含まれるという違いを考慮する必要がある。[1]
蜂窩織炎や丹毒の患者におけるDVTのリスクを判定するための文献の系統的レビューおよびメタアナリシスを行った研究では、Wells基準やD-dimerにより有病率を評価したとき、蜂窩織炎を有する患者のDVT発症率は通常のDVT発症率よりも高いという結果が出たが、DVTが近位か遠位か、患者の異なる臨床設定、DVTを除外するためにWellsスコアやD-dimerを使用したとき、蜂窩織炎や丹毒がD-dimerレベルを誤って上昇させた可能性などが完全に適用されていないため議論の余地があるという結論となった。[2]
両者の鑑別としては悪寒の有無、下部ふくらはぎの痙攣などがあげられる。[3]リスク因子の機序については上記の不確実性を考慮した前向き研究が今後必要である。この機序を解明することで臨床現場において医師が合併の可能性を視野に入れることで患者の治療の正確性を高め、さらに蜂窩織炎の患者においてDVTの発症を予防的に防ぐことができるのではないかと考えた。
参考文献
- Maze MJ, Skea S, Pithie A, Metcalf S, Pearson JF, Chambers ST. Prevalence of concurrent deep vein thrombosis in patients with lower limb cellulitis: a prospective cohort study. 2013 Mar 19;13:141.
- Gunderson CG,Chang JJ. Risk of deep vein thrombosis in patients with cellulitis and erysipelas: a systematic review and meta-analysis. 2013.Sep;132(3):336-40.
- ハリソン内化学 第5版
- H28年度 高齢者におけるDVTの疫学的調査(28-43) 国立長寿研究センター
寸評:大きなテーマでした。よってまとめるのは大変でした。が、それは決して悪いことではありません。学生のときはむしろ小さくまとめないほうが良いくらい。
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