注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
感染症内科レポート
「化膿性脊椎炎の生じる部位の頻度と予後に差はあるのか」
化膿性脊椎炎が頸椎、胸椎、腰椎のどの部位に生じやすく、またその部位によって予後が変わってくるのか調べてみた。
1999年から2009年にかけてサンカルロス病院に通院した感染性椎間板炎患者を対象とした後ろ向き研究によると、感染性椎間板炎を有する108人のうち、4人が頸椎、38人が胸椎、66人が腰椎に病変が認められた。(1) また、Urrutiaらは化膿性脊椎炎を有する102人を対象に疫学、予後、臨床転帰の点で頸部化膿性脊椎炎を有する患者と胸腰部化膿性脊椎炎を有する患者の比較を行った。それによると、19人(18.6%)が頸部に、83人(81.4%)が胸腰部に病変が見られた。(2) このことから、化膿性脊椎炎は腰椎に最も生じやすく、次いで胸椎、頸椎の順に発生する。原因として、細菌が血行性に運ばれ血流の豊富な部位に生じるためだと考えられる。
さらに、この頸部に病変が見られた19人の中で13人(68.4%)に神経学的欠損があり、11人(57.9%)に硬膜外膿瘍が見られた。頸部化膿性脊椎炎を有する患者は他の部位の化膿性脊椎炎と比較して、神経障害(68.4%対41%;p=0.03)、外科的治療(84.2%対46.3%;p<0.01)、死亡率(21.1%対3.6%;p=0.02)が有意に増加した。(2) また、Hadjipavlouらの術後感染症を除いた101例の化膿性脊椎炎の後ろ向き研究によると、硬膜外膿瘍は35例で見られ、各部位の脊椎炎から硬膜外膿瘍へ進展するのは、頸椎では90%、胸椎では33.3%、腰椎では23.6%だった。(3) これらから、化膿性脊椎炎が頸椎に生じた場合他の部位と比較して、神経障害や外科的治療の必要性、死亡率が増加する。原因として、硬膜外膿瘍が挙げられる。硬膜外膿瘍は頸椎において罹患率が高く、頸部の脊柱管の断面積が小さいことや可動性が大きいことで膿瘍による神経の圧迫が起こりやすなり、神経障害、またそれに対する外科的治療が増加すると考えられる。硬膜外膿瘍と死亡率との明確な因果関係は調べられなかった。
結論として、化膿性脊椎炎は腰椎>胸椎>頸椎の順に生じやすく、頸椎に生じた場合他の部位と比較して、神経障害や外科的治療の必要性、死亡率が増加する。
<参考文献>
(1)Management of infectious discitis. Outcome in one hundred and eight patients in a university hospital; Cebrián Parra JL, Saez-Arenillas Martín A et al.
Int Orthop. 2012 Feb;36(2):239-44. doi: 10.1007/s00264-011-1445-x. Epub 2012 Jan 4.
(2)Cervical pyogenic spinal infections: are they more severe diseases than infections in other vertebral locations?; Urrutia J, Zamora T, Campos M.
Eur Spine J. 2013 Dec;22(12):2815-20. doi: 10.1007/s00586-013-2995-y. Epub 2013 Sep 8.
(3)Hematogenous pyogenic spinal infections and their surgical management; Hadjipavlou AG, Mader JT et al. Spine (Phila Pa 1976). 2000 Jul 1;25(13):1668-79.
寸評:よくまとまっていました。
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