注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
感染症内科 BSLレポート
「Klebsiella pneumoniaeによる尿路感染症から菌血症に移行するリスク因子は何か」
尿路感染症により引き起こされる菌血症は、尿路性敗血症を引き起こす重大なリスク因子である[1]。尿路性敗血症は、尿路感染症において最も重篤な感染状態であり、敗血症全体のうちの9-31%を占める[2]。尿路性敗血症を引き起こすと、20-40%の割合で死に至り、尿路性敗血症を予防することは重要であるといえる。
Kimらは、菌血症発症の予測モデルを立てるために単純性急性腎盂腎炎を発症した女性を対象に後ろ向き研究を行った[3]。ランダムに選んだ494人の患者のうち、菌血症を発症した患者は97人(19.4%)であった。65歳以上の患者(菌血症発症群 55.7%/菌血症非発症群 20.4% [OR]5.08 p<0.001)、高血圧患者(43.3%/19.7% p<0.001)、糖尿病患者(23.7%/13.6% p=0.014)において、菌血症発症に有意な差が見られた。
Laluezaらは、尿路感染症と診断された患者213人を対象に同様の研究を行い[4]、尿路系の悪性腫瘍のある患者は悪性腫瘍のない患者に比べて菌血症を発症するリスクが18倍高いという結果が得られた([OR]11.79 p=0.019)。
以上より、尿路感染において高齢であること、高血圧患者であること、糖尿病患者であること、尿路系悪性腫瘍があることは、菌血症に移行するリスク因子であるといえる。
Klebsiella のみを対象としたデータは見つけることができなかったが、Klebsiellaは尿路感染症の代表的な起因菌の一つであり、この結果を応用可能と考える。
[1]. Factors associated with severe sepsis or septic shock in complicated pyelonephritis. ; Ruiz-Mesa JD et al ; Medicine (Baltimore). 2017 Oct;
[2]. Urosepsis—Etiology, Diagnosis, and Treatment; Dreger NM et al ; Dtsch Arztebl Int 2015
[3]. A simple model to predict bacteremia in women with acute pyelonephritis ; Kyung Su Kim et al ; J Infect. 2011 Aug
[4]. Risk factors for bacteremia in urinary tract infections attended in the emergency department. ; Lalueza et al ; Intern Emerg Med.
寸評:(学会で)直接指導できなくてすみません。レポートは4年生にしてはよくできていると思います。いまは、これでいいです。
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