注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
2016年7月15日より、レポート提出のルールを変えています。学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。
また、未完成者が完成者より得をするモラルハザードを防ぐために、完成原稿に問題があってもあえて修正・再提出を求めていません。レポート内には構造的に間違いが散在します。学生のレポートの質はこれまでよりもずっと落ちています。そのため、岩田が問題点に言及した「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
結核性髄膜炎の診断において髄液中のADA値はどれほど有効か
結核性髄膜炎は、ほかの髄膜炎と比較して特徴的な臨床所見が乏しく、診断が難しい。髄液中の所見も他の髄膜炎とオーバーラップすることは多く、診断には結びつきにくい。しかし、髄液中のADAが、特徴的なマーカーのひとつではないかといわれており、髄膜炎の鑑別の際にしばしば測定される1)。このADAが結核性髄膜炎の診断に寄与するのか考察する。
この髄液中のADAの有効性を調べるためにTuonらは、1966年から2007年で、結核性髄膜炎患者と他の髄膜炎(細菌、ウイルス、真菌、非感染性)患者を比較したシステマティックレビュー13編のメタ解析を行った。以下がその結果である。
カットオフ値(U/I)
感度(%)
特異度(%)
陽性尤度比
陰性尤度比
診断オッズ比
4.0
93
80
4.67
0.09
52.89
p=0.001
8.0
59
96
13.71
0.42
32.36
p=0.001
筆者らは、ADAが1.0~4.0 U/Iなら結核性髄膜炎の除外には使える可能性があり、8.0 U/I以上なら結核性髄膜炎の診断に役立つとしている。ただし、この数値をもって髄液中ADAは診断に有用であるとはいえない。なぜなら髄液中のADAは細菌性髄膜炎や真菌性髄膜炎でも上昇するからである3)。Tuonらも、どのカットオフ値でも細菌性髄膜炎と結核性髄膜炎を区別することはできなかったと述べている。
髄液ADAの有効性は別にある。先述したように、髄液ADAはスクリーニング能が高い。また、結果が出るのが早いという特徴がある。結核性髄膜炎は速やかな診断・治療が必要だが、診断に最も特異度の高い培養検査やPCRは数日を要するため、確定診断にかなりの時間を要してしまう。髄液中のADAは速やかに測定出来るので、もし細菌性髄膜炎が否定的で、臨床的に結核性髄膜炎の可能性が示唆されれば、早期に結核性髄膜炎の治療を行うか否か議論に移ることが出来る。よって、髄液ADAは、結核性髄膜炎の早期治療介入に寄与し得る。
Reference
1)Up to date; Central nervous system tuberculosis; Sep 28, 2017
2)FF. Tuon, HR. Higashino, MIBF. Lopes et al; Adenosine deaminase and tuberculous meningitis – A systematic review with meta-anarysis; Scandinavian Journal of Infectious Disease, 2010; 42; 198-207
3)日本内科学誌;vol.85(1996);No.5;705-710
病期
臨床所見
StageⅠ(Early)
非特異的な症候のみで、明らかな神経学的所見のないもの
StageⅡ(Medium)
わずかな意識の変容および局所の神経症状のみを呈するもの
StageⅢ(Advanced)
四肢の麻痺や痙攣、重篤な意識障害を伴うもの
寸評:うまく表出できなくてすみません。やはりipadでは難しいのか、僕の技術が悪いのか。このレポートのテーマはシンプルですし、まあわりと簡単に書けるものでしたので問題設定についてはちょっと不満でした。その代わり良いレポートになっています。ハードルを高くして難しい命題にチャレンジするとレポートの出来は悪くなります。どっちがいいんだか。
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