D「研修医は「やっぱり感染症だ、抗菌薬は必要だ」と思いこんで、薬を継続させてたんだよ」
S「だから、研修医なんだから間違いくらい、するでしょ」
D「そこじゃない。あやつ、指導医に相談せずにそれをやってた」
S「、、、あっ!」
D「研修医は指導医の下僕じゃない。反対意見があれば言えばいい。議論も討論も大歓迎だ。だが、背後で黙ってコソコソと診療方針を変えるのはご法度だ!」
S「たしかにそうですねえ」
D「昔から、特に大学病院では臨床のできない、基礎の業績で教授になった教授回診でこういうことが行われてきた。別に基礎の業績で教授になっても、構わん。困るのは、組織のトップに立ったことで間違った全能感に支配され、「俺は臨床もできる」「チームを指導しなければ」という間違った観念にトラップしてしまう教授たちだ。黙って臨床のことは臨床屋に任せておけばいいのに、週一回の回診でよけいな指示を出す。それにうんざりして、部下たちは背信行為をする。教授に黙って「裏で」別の診療をするんだ」
S「大学病院、あるあるですねえ」
D「その気持は分からんでもない。が、明らかに時代遅れな考え方だ。だいたい、上司に歯向かわないのが時代遅れだ。診療方針で異論があれば正々堂々と異論を唱えればいい。上下関係なんて関係ない。丁々発止の議論をすべきなんだ」
S「みんながD先生のようにタフなわけではないですからねえ」
D「この程度のことにはタフネスなんぞ要らん。だいたい、俺に黙って診療方針を決めて、患者が急変したりしたらどうするんだ?誰が責任を取る?研修医を守り抜くのが指導医の勤めだが、指導医のあずかり知らぬところで研修医が勝手なことをやったら、守りきれないだろ」
S「ああ、それはそうですねえ」
D「回診が単なる上意下達の「指示」になっているから、研修医も臨床力がつかない。自分の頭で考えなくなるからな。それをしなければ、指導医を無視したインモラルな医療をやる。どっちに転んでも、ろくな医者にはならない。だから、この悪循環を打ち破り、負の循環から正の循環にひっくり返す必要がある。そのためには真剣に、必死に、研修医を叱り飛ばすしかない!そして、反論させるのだ」
S「なんか、そこが飛躍してる気がしますが、なんとなく分かりました」
D「ああ、ムカついた。よし、これからサンドバッグ叩いて、ストレス発散だ!」
S「そこは全然分かりません〜〜〜」
第92回「真剣に怒り、相手にも主張させよ」その2 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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