S「D先生、なんか研修医にむっちゃ怒ってましたね。何があったんですか?」
D「見てみろ。カンファで中止すると言ってた抗菌薬がもう5日も入っている。俺がちょっと出張に行っている間にこれだ。しかも、その間のカルテはみんなコピペだ。見ろ。患者は解熱してないだろ」
S「あ、ほんとだ」
D「解熱はしてないが、臨床的には安定している。このことは2つのことを教えてくれてる。一つ目、今使っている抗菌薬は役に立ってない(俺が予想したとおり)。二つ目、この病気は抗菌薬なしでもどんどん増悪しない病気だ。患者は熱以外は安定していて、検査も変化ないからな。つまり、コンベンショナルな細菌感染ではなさそうだってことだ」
S「今使ってる抗菌薬に耐性の菌が原因ってことは?」
D「ならば患者の症状は増悪する可能性が高い。しっかり頭を使え。そのクビの上に乗っているのは紙風船か?吹いて飛ばすぞ。だいたい、この21世紀にわざわざ東京まで呼び出して出張、会議とは何事だ?スカイプ使えよ、スカイプ。そもそも、日本の会議は基本報告事項ばかりで、決定済みのことを「審議事項」とかいって回してくるくせに反対意見を述べても「もう、これは決まってますから」とか既定路線に勝手にしやがって」
S「D先生、完全に八つ当たりモードになってますよ」
D「やられなくても、やり返す」
S「何いってんですか。研修医に当たっちゃダメでしょ」
D「ばか、研修医には八つ当たりなんかしない。お前だけだ、俺様のストレス発散サンドバッグは」
S「嫌だ〜〜その役回り。でも、じゃなんで研修医に怒ってたんですか?研修医がミスするのは当たり前だっていつも言ってるじゃないですか」
D「ミスを怒ってるんじゃない!」
S「はあ?」
第91回「真剣に怒り、相手にも主張させよ」その1 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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