S「いや~、A先生はやっぱ優秀だな。あんな優秀な研修医を教えることができるなんて、指導医冥利に尽きるというものですよ」
D「そうか?俺はそんなにすごいとは思わんけどな」
S「また~素直じゃないんだから。優秀な研修医は素直に優秀って認めてあげたらどうですか?」
D「俺様が研修医だった頃は、あんなもんじゃなかった」
S「そういう言い方する指導医が一番嫌われるんですよ」
D「だって、事実だモーン」
S「自己申告じゃないですか。それに僕等じゃ事実確認できないし」
D「だって、事実だモーン」
S「そうですかあ?疑わしいなあ。でも、D先生ほどではないにしても、A先生はうちのエース・クラスの優れた研修医ですよ。このままいったら、チーフ・レジデントになってみんなを統率するよいリーダーになりそうです」
D「まあな。S先生好みの優等生タイプであることは、認める」
S「棘がありますねえ。優等生タイプでいいじゃないですか」
D「もちろん、優等生なことは全然悪くない。でも、教えがいがあるかというと、どうかな」
S「そうですか?やっぱり優秀な研修医を教えるのって楽しいじゃないですか」
D「そうかなあ」
S「ま、たしかに優秀な研修医の中にはこましゃっくれた、鼻っ柱の強いタイプもいますからね。生意気に反抗してくるタイプは困りますけど」
D「俺は、そういう研修医のほうが好みだけどな」
S「変な好みをしてますね。まあ、D先生に普通を求めるのが間違ってるか、、、、」
D「反抗してくるってことは、「この殻を破りたい」という意欲を持っているということだ。また、「叩かれる覚悟」を決めていることでもある。そういう研修医なら、思いっきり叱り飛ばしても潰れないし、そして、伸びる。安心して教えられるじゃないか。A先生みたいなのは、一回叱り飛ばされるとペシャンコになってしまうタイプだ。だから、みんな腫れ物を触るような大事な扱いをしなきゃいけない。でも、医療現場において挫折ゼロってことはありえないだろ。いつかは挫折を味わう。その時潰れないためには、今からレジリエンスを教えとかなきゃならない。潰れやすいやつを潰れにくい存在に格上げするのって難しいんだぞ」
S「うーん、なるほど」
D「いずれにしても、A先生は別にS先生が教えなくたって、あるいは誰が教えたって、まあまあすいすい伸びていく存在だ。逆に言えば、そこが「教えがいがない」という意味にもなってくる」
S「え?」
第85回「優秀じゃない研修医を教えよ」その1 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。Aは架空の研修医です。
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