D「ほら、3年前までうちをローテートしてた、E先生がいるだろ。彼、整形外科に入局したんだぜ」
S「え?そうだったんですか?D先生、よくご存知ですね」
D「草の者がいるからな。院内の人事、ゴシップはすべて掌握している」
S「ゴシップは関係ないでしょ」
D「やつを使え。彼なら親切に相談に乗ってくれるはずだ」
S「分かりました。ありがとうございます」
<後日>
S「D先生、ありがとうございます。E先生が丁寧に見てくださって、数日間経過観察だけで患者はよくなりました。ああいう判断、やっぱ整形外科医じゃないとできないですよね」
D「そうだろ。コンパートメント症候群みたいな、検査でリジッドに診断しづらい現象はなんといっても経験値と、四肢の診察能力だ。四肢の診察にかけて、整形外科医の右に出るものはいない。こういうときは「餅は餅屋」に限る」
S「そうですね。それにしてもD先生のアドバイスも見事でした。あんなに親切に対応してくれるとは、、、」
D「E先生は総診をローテートしてるからな。うちの科のメンタリティーも分かっているし、うちの科の「弱さ」も中から見てよく把握している。メンタリティーと「弱さ」の把握は、よいコンサルタントを作るんだよ。だから、スーパーローテートって大事なんだ。よく、2年目で自分が行く診療科だけ選択する研修医がいるだろ。あれは本当に短見で、長い目で見たらよい臨床医は育たない。優れた整形外科医になりたければ、内科系のローテートを一所懸命やるべきだ。逆もまた然りで、よい内科医になりたければ外科ローテートをサボらないのが大事だ。口を酸っぱくしてこう言ってんだけど、たいていの研修医は逆の判断をとる。やっぱ、あいつらバカだよな~~~」
S「研修医バッシングすると人気が下がりますよ」
D「おれはお前みたいな人気取りの点取り虫、病院内のAKB48みたいなのには興味ないんだよ~~」
S「でも、たしかにE先生はうちを回ったからこそ、内科医が心配しそうな「ポイント」をよく抑えて、すぐに見に来てくれて「心配だったでしょう」と声までかけてもらって、本当にこちらも気持ちよくいっしょに仕事ができました。素晴らしいですね」
D「日本はコンサルト業に診療報酬がつかないから、どうしてもコンサルトを甘く見がちだ。「ついでにできる」と思われがちで、しばしば「必要ない、無駄な仕事をさせられてる」と不平に思う医者すらいる。「こんなことで俺様を呼びやがって」と自分目線でふんぞり返った態度を取りがちだ。他の科を回っておけば、相手の思考プロセスや不安はよく理解できるから、そういう悪い態度は取らない。また、逆に内科的な問題で悩んだときも、自分でこねくり回してやっつけ仕事をせずに、すぐに内科医に相談してくれる」
S「win winですね~~~」
E「あ、S先生、D先生。おそろいですね」
S「おお、E先生。今回は本当に助かったよ。どうもありがとう」
E「いえいえ、このくらいいつでもどうぞ」
S「それにしても、対応速かったよね~感動したよ」
E「いや~なにしろDノートは効果抜群ですから」
S「何?そのDノートって」
E「D先生が、研修医時代のミスやしくじりを逐一記録して、それをちらつかせるんです。あんなの、今になって蒸し返されたら大恥ですからね。やっぱスーパーローテートって最悪ですね~」
S「え~~、なにそれ?D先生?、、、、って、いない!逃げた!」
第68回「教え子を活用しよう」その2 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医で、Eも架空の整形外科医です。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。