毎週金曜日は、感染対策と英語についてのコラムです。
I「MさんはCNICなんですが、ICNともよく呼ばれますよね」
M「あんま、そこは気にしてませんが」
I「そうなんです。この業界ではやたら「正しい言葉」にこだわりたがる人が多いですが、言葉はどんどん変化していくものなので、その都度「正しさ」のあり方も変わってくるんです」
M「なんか、難しいですね」
I「ほら、秋葉原ってあるでしょ。あれってもともとは「あきばはら」だったんです。それが誰かの言い間違いが定着して、いつの間にか「あきはばら」になりました。山茶花もそうですね。あれも普通に読めば「さんざか」のはずです」
M「ほんまや」
I「こうやって「いいまつがい」が定着しちゃって「間違い」が「正しく」なることってわりと多いんです。ようは、皆が使ってて誤解が生じなければ、その言葉は「正しい」」
M「な〜るほど」
I「辞書に書いてあるから正しい、のではなく、正しくなったから辞書に載るようになるんです。英語でも同じで、昔はE-mailとかe-mailが正しくてemailというハイフンなしの表記は「間違い」と言われていましたが、今はemailのほうも辞書に載るようになっているとか。まあ、書き手としてはハイフンない方が楽ですもんね」
M「そうですねえ」
I「間違ってると悪評の「ら抜き言葉」も定着すれば「正しい」言葉になる可能性が高いです。よく考えてみたら、「見られる」という言葉は「受け身」(だれかに見られる)と「可能」(見ることができる)の両方の意味があって紛らわしい。ら抜きにして「見れる」ならばこのような誤解は生じません。「ら抜き言葉」って合理的なんです」
M「抗生物質とか、抗生剤も「間違いじゃない」ってI先生よく言ってますもんね」
I「そうですね。昔は微生物が作ってるのが抗生物質と呼んでいましたが、そもそも世界最初の抗菌薬、サルバルサンは当初「化学療法(Chemotherapie)」と呼ばれていました。でも、語源に忠実に「いまから化学療法やって」とか言ったら現場では誤解の元でしょ。antibioticsという英語は直訳すると「抗生物質」ですが、Goodman & Gilmanみたいな薬理学の教科書でも新しい版ではantibioticsを抗生剤とも抗菌薬とも取れるように解釈しています。まあ、ユーザー目線でいうと、自然界から抽出されようが合成されようが関係ないですからね。言葉の意味は、ユーザーに便利なように変わっていくのです」
M「ほんとですね」
I「じゃ、今回はこれでおしまい」
M「オチはないの?」
I「関西人、ってボケとオチがないと許してくれませんね」
I「
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