注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
CIED感染症の治療において、速やかに装置を取り除いて抗生剤を投与すべきか
高齢化と医療技術の進歩に伴い、心臓植込み型不整脈治療デバイスCIEDをインプラントした患者が増えている。こうした患者がCIED感染症を発症した場合、治療法によって予後に大きな差が生じ得ることが想定される1。以下の研究はMayoクリニック(米ミネソタ)において、1991-2008の間にCIED感染症を発症した患者415人に対して行ったCIED除去/非除去治療について、その経過を比較したものである。
CIED感染症を罹患した患者における発症後30日の死亡率は、装置を除去することなく抗菌薬治療のみを行った場合(31.3%)、装置を除去した場合(4.5%)に比べて約7倍となった(hazard ratio[HR] 6.97, 95%confidence interval[CI] 1.36-35.60)2。その一方で、装置除去に随伴する合併症による30日死亡率(18.6%;全除去例中6/376-1.60%)の増加は4倍強であった(HR 4.33, 95%CI 1.47-12.70)2。合併症による死亡の原因は心臓・血管引き抜き損傷、リード破片の遺失、新しい部位への感染などであった。
また、発症後ただちに装置を除去した場合の1年死亡率(13.2%)は、抗菌薬治療のみの保存的治療を行った場合や抗菌薬治療の頓挫した後に装置を除去した場合の1年死亡率(38.1%)に比較して、約3分の1であった(HR 0.35, 95%CI 0.16-0.75)2。
以上の結果から、感染後速やかに装置を取り除いて抗生剤を投与する治療法は、患者の予後を向上させる効果が高いと考えられる。
- Talha Riaz, Juhsien J. C. Nienaber, Larry M. Baddour, et al.
Cardiovascular implantable electronic device infections in left ventricular assist device recipients
Pacing and Clinical Electrophysiology, Vol.37 issue2(2014), pp225-230
- Katherine Y. Le, Muhammad R. Sohail, Paul A. Friedman, et al.
Impact of timing of device removal on mortality in patients with cardiovascular implantable electronic device infections
Heart Rhythm, Vol.8 issue11(2011), pp1678-1685
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