注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
大建中湯は便秘に有効なのか
大建中湯とは山椒、乾姜、人参、膠飴の四つの生薬で構成される漢方である。
古くから腸の蠕動亢進が発作性にきたして腹痛の激しい場合に用いられており1)、慢性便秘症の改善を図って処方されることが多い。さらに近年では術後の腸管機能障害の改善についても研究2)がすすめられている。今回担当した患者の慢性便秘症に対して処方されていたことから、そもそも慢性便秘症に対してどの程度の改善が見込まれているのかについて調べることにした。
慢性便秘症を伴った腹部膨満を訴える10名に大建中湯15g/dを14日間にわたり経口投与し、腹部自覚症状の変化を調べた無作為化試験3)では、全般的な胃腸症状の改善(P=0.004)を認めた。特に腹部膨満感の減少(P=0.0051)、消化不良の改善(P=0.008)、便秘の改善(P=0.004)が有意にみられた。全治療効果への総合評価も増加(P=0.0051)した。
上記の結果の通り、患者の自己評価を基にすると大建中湯の有用性は高いと考えられる。しかし、便通回数は、投与後0日(0.63回)、7日(0.84回)、14日(0.77回)において有意に改善しておらず、Bristol Stool Scaleによる便の形状4)も、投与後0日(2.42)、7日(2.40)、14日(2.55)において改善はみられなかった。以上から、その過程は明らかではないが、大建中湯は腹部の自覚症状を解消するには有効であるといえる。
参考文献
- 『臨床応用漢方処方解説』 創元社 矢数道明
- Effect of TU-100, a traditional Japanese medicine, administered after hepatic resection in patients with liver cancer: a multi-center, phase III trial (JFMC40-1001). J. Clin. Oncol. 20, 95–104.
3)Effects of Daikenchuto on Abdominal Bloating Accompanied by Chronic Constipation: A Prospective, Single-Center Randomized Open Trial.
Curr Ther Res Clin Exp. 2015 Dec; 77: 58–62.
4) Stool form scale as a useful guide to intestinal transit time.
Scand J Gastroenterol. 1997 Sep;32(9):920-4.
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