注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
糖尿病による足潰瘍患者に対し、amputationに至らないために行うべきことは何か?
糖尿病患者の15%は人生のどこかの時点で足部潰瘍を生じるとされている。そして、糖尿病足潰瘍の治療の一環として、生命に危険のある感染症を認めた場合や、感染症のコントロール、壊死などの問題が解決できない場合にはamputationを行うこととなっている(1)。Amputationへの移行は避けるべきであり、そのためamputationの危険因子を調べ、予防策を考察してみた。
Mohammad Koganiらは症例対照研究で、amputationの危険因子として、HbA1cの値を1年に1回以下しか測らないこと(OR, 13.97; 95% CI, 4,97 to 39.26)、合わない靴(OR, 5.50; 95% CI,2.20 to 13.77)、喫煙(OR, 3.44; 95% CI, 1.45 to 8.13)などがあると発表している(2) 。喫煙が挙げられているが、喫煙は動脈硬化のリスクファクターであり循環動態の悪化を引き起こすからであると考える。このことより、amputationへの予防策としてはHbA1cの定期的な検査、フットケア、禁煙があげられる。
またPemayun TGらは症例対照研究で、HbA1c ≥8% (OR 20.47, 95% CI 3.12-134.31; p=0.002)、末梢動脈障害(OR 12.97, 95% CI 3.44-48.88; p<0.001)、高トリグリセリド血症(OR 5.58, 95% CI 1.74-17.91; p=0.004), 高血圧 (OR 3.67, 95% CI 1.14-11.79; p=0.028)がamputationへの独立した危険因子であると発表した。HbA1cとamputationの強い結びつきは、慢性的な高血糖が神経障害、末梢動脈障害、感染感受性を引き起こす役割を担っているからであると示している(3)。高トリグリセリド血症、高血圧が挙げられているが、これらは動脈硬化の危険因子であるからだと考える。この論文よりHbA1cの値や、トリグリセリド、血圧の値を低くおさえること、血流の改善が予防策として考えられる。
以上の二つの論文より、糖尿病足潰瘍患者へamputationの適応を防ぐため行うべきことは、慢性的な高血糖を回避することであると言える。また禁煙、脂質異常の是正、血圧の低下などにより動脈硬化を悪化させないようにすることや、フットケアを行うことも大事だと考えられる。
参考文献
(1) レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版
(2) Mohammad Kogani, et al. Risk factors for amputation in patients with diabetic foot ulcer in southwest Iran: a matched case-control study; Epidemiol Health. 2015 Oct 5;37:e2015044.
(3) Pemayun TG, et al. Risk factors for lower extremity amputation in patients with diabetic foot ulcers: a hospital-based case-control study; Diabet Foot Ankle. 2015 Dec 7;6:29629.
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