献本御礼。
「こうすればガンにならない」とか「病気にならない生活法」「〇〇になりたくなければ✖️✖️をしなさい」といったタイトルの本とは真逆の本です。この手の健康本で信用に値するものはほとんどゼロですが、残念なことに、非常に残念なことにこういう本の方がよく売れるのもまた事実。多くの患者候補には読んで欲しい内容ですが、果たしてどうなることやら。
ところで、「こうすればガンにならない」系の本がほとんどインチキとかトンデモなのはいいとして、そういうインチキ/トンデモに警鐘を鳴らす「アンチ/トンデモ」本とも一線を画しているのが本書の特徴です。簡単に言うと、医者をあまり擁護していません。「アンチ/トンデモ」はプロ科学、プロ医療な訳ですが、同時にプロ(オーセンティックな)医者だったりする訳です。しかし、実は医者は案外科学的でも理性的でもない訳で、そういう意味では本書は案外アンチ/現代医学な本です。言ってみれば、科学教信者というか。
というか、本書はタイトルからして患者に向けて書かれた本のようなふりをして、実は医者に向けれて書かれているとすら勘ぐりたくなります。僕に送られてきたのは、想定読者だったからだったりして。ポリファーマシーや検査漬けには気をつけよう、とか「全人的すぎる医者」には気をつけよう、というメッセージは、実は医者に向けられたメッセージなのではないでしょうか。
医者の言うことは「話半分」でいい、というタイトルは、医者は意味のあるメッセージを50%程度しか出しておらず、残りの半分は無意味か、むしろカウンタープロダクティブで有害な言葉なのだ、という指摘でもあります。それは実に事実だと思います。「医者の言うことは全部聞いとけ」とならないのはどうしてなのか、どうすれば医者の言葉が患者にとって価値のあるものになるのか、本書の示唆するところは実に大きいです。だから、本書は患者にも読んで欲しいですが、医者にも是非読んで欲しい。うちの病院とか全員読むべきだと思うけど、(たいていのメッセージがそうであるように)メッセージの必要な相手には本も言葉も届かない、のが常なんだよなあ。僕の抗菌薬の本とかも、本当に読むべき人は、たいてい読んでない。
というわけで、本書が読むべき本なのは声を大にして言いたいですが、読むべき患者、読むべき医者に本書が届くかどうかというと、そんなに楽観視できません。これは一つのアポリアだと思います。
あ、病歴オタクの僕は患者から病歴を聞きたがりすぎる、という本書の指摘にとても反省させられました。やはり本書は僕のために送られてきたのでした。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。