注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
糖尿病に伴う足部感染における骨髄炎の診断に有用な検査
骨髄炎は炎症が骨および骨髄に到達した状態のことであり、骨髄炎は血行性、術後感染や初感染巣をほかに持つ二次性、末梢血管障害性に分類される(1)。末梢血管障害性の骨髄炎の起因菌としては黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、グラム陰性桿菌や、Bacteroides、Clostridiumといった嫌気性菌を含む混合感染が多い(2)。診断のゴールドスタンダードは骨生検である。非侵襲的で感度、特異度ともに高い単一の検査が無いので骨髄炎の診断は難しい。どのように非侵襲的な検査を組み合わせて骨髄炎を診断すればよいか疑問に思い骨髄炎の診断に有用な検査を調べた。
Dinhらは糖尿病で足部感染のある612人に対してメタ解析を行った。単純X線、MRI、骨シンチ、PTB(probe to bone)の骨髄炎の診断における感度、特異度を求めた。単純X線写真は感度54%特異度68%、MRIは感度90%特異度79%、骨シンチは感度81%特異度28%、PTBは感度60%特異度91%であった。MRIが最も感度が高く、PTBは最も特異度が高かった(3)。
Ertugrulらは糖尿病で足部感染のある46人の患者を対象として潰瘍のサイズと赤血球沈降速度が診断に有用かを調べる前向き試験を行った。潰瘍≧2cm2は感度88%特異度77%。赤血球沈降速度≧70mm/hrは感度83%特異度77%であった。両方を満たす場合は感度79%特異度82%と2つの指標を組み合わせる意義は見いだせなかった(4)。
Michailらは糖尿病で未治療の足部の感染のある61人の成人について骨髄炎の診断に使われることの多い血清マーカー(ESR,CRP,プロカルシトニン)の感度、特異度を調べるコホート研究を行った。骨髄炎の診断の感度、特異度はESR>67mm/hrは感度84%特異度75%、CRP>14mg/lは感度85%特異度83%、プロカルシトニン>0.3ng/mlは感度81%特異度71%であった(5)。つまり非特異的であるESR、CRP、プロカルシトニンは骨髄炎の診断には有用でない。
以上より骨髄炎の診断に用いられているどの非侵襲的な検査も感度、特異度はそれほど高くなく除外診断、確定診断に有用と言うことができない。そのため身体所見、病歴、検査を組み合わせて診断することが重要である。画像検査、血液検査、身体所見を組み合わせた場合の骨髄炎の診断の感度、特異度を求めた研究は探し出せなかった。
1)レジデントのための感染症診療マニュアル第二版 青木眞2)感染症診療のエビデンス 青木眞3) Dinh MT, Abad CL, Safdar N. Diagnostic accuracy of the physical examination and imaging tests for osteomyelitis underlying diabetic foot ulcers: meta-analysis. Clin Infect Dis. 2008;47:519-527.4) Ertugrul BM, Savk O, Ozturk B, et al. The diagnosis of diabetic foot osteomyelitis: examination findings and laboratory values. Med Sci Monit. 2009;15:CR307-CR312.5) Michail M, Jude E, Liaskos C, et al. The performance of serum inflammatory markers for the diagnosis and follow-up of patients with osteomyelitis. Int J Low Extrem Wounds. 2013;12:94-99.
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