注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
レボフロキサシンの使用と耐性緑膿菌の出現頻度について
レボフロキサシンのスペクトラムは非常に広域で、バイオアベイラビリティも良好であるため使い勝手が良い。しかし、緑膿菌に対する数少ない経口薬の一つであるため、耐性を獲得するとその後の抗菌薬治療の選択肢が狭まる。(1)(3)そこで、レボフロキサシンの使用とレボフロキサシン耐性緑膿菌との関連について調べた。
PolkらによってHospital antibiotic use in the Surveillance and Control of Pathogens of Epidemiologic Importance(SCOPE)と、MediMedia Information Technology(MMIT)のデータが検索され、1999年の24病院、2000年、2001年の35病院におけるレボフロキサシンの使用が集計された。また、IMS Healthとそれに連動するXponent databaseから1999年と2000年における各々の病院の半径10マイル以内の地域でのレボフロキサシンの処方数が調べられた。これらにより、レボフロキサシン使用の推移とレボフロキサシン耐性緑膿菌の相関性が評価された。(2)
病院でのレボフロキサシンの使用は1999年から2001年にかけて、1000patient-daysあたり88から132へと増加しており、地域でのレボフロキサシンの処方は1999年から2000年にかけて1000patient-daysあたり2.3から2.8へとわずかに増加した。また、病院で検出される緑膿菌のうちキノロン耐性緑膿菌の割合は、1999年に29%、2000年に36%、2001年に38%と増加傾向であった。(2)
病院でのレボフロキサシンの使用と耐性緑膿菌の関連性について単変量解析を行った。1999年の17病院における解析では、関連はありそうだが統計学的に有意な相関はみられなかった(R2=0.21 P=0.066)。しかし、2000年の28病院、2001年の27病院における解析では有意な相関がみられた(それぞれR2=0.38 P=0.0006、R2=0.39 P=0.0008)。地域でのレボフロキサシンの使用と耐性緑膿菌の関連性についても同様に単変量解析を行うと、1999年、2000年ともに有意に相関があった(それぞれR2=0.56 P=0.001、 R2=0.25 P=0.008)。(2)
これらの解析の結果から、病院・地域どちらにおいてもレボフロキサシンの使用とレボフロキサシン耐性緑膿菌に相関性があるということがいえる。
<参考文献>
- レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版 青木眞
- Polk RE, Johnson CK, McClish D, Wenzel RP, Edmond MB. Predicting Hospital Rates of Fluoroquinolone-Resistant Pseudomonas aeruginosa from Fluoroquinolone Use in US Hospitals and Their Surrounding Communities. Clin Infect Dis. 2004 Aug 15;39(4):497-503.
- Peterson LR1, Postelnick M, Pozdol TL, Reisberg B, Noskin GA. Management of fluoroquinolone resistance in Pseudomonas aeruginosa—Outcome of monitored use in a referral hospital. Int J Antimicrob Agents. 1998 Aug;10(3):207-14.
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