注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
カテーテル関連感染症の予防に有効な手段
カテーテル関連感染はあらゆる疾患分野で、コストを上げ、入院期間を延ばし、院内死亡率を上げる事が知られているが、適切な手段を講じる事でほぼ完全に予防する事ができると言われている(1)。また、その予防に有効な手段は、米国医療保健改善協会により作られたケアバンドルの実践に基づいている(2)。現在、カテーテル関連感染に対する様々な予防法が提案されているが、今回はそれがどの程度効果を発揮するのか調べた。
Berenholtzらによる前向きコホート研究では、Johns Hopkins病院に入院していたICU患者を対象に、予防対策を行った群と行わなかった群を比較した。予防対策とは、スタッフの教育、カテーテル挿入時に専用カートを使用すること、毎日のカテーテル抜去の検討、院内ガイドラインの遵守、院内ガイドラインが守られていなければ挿入を中止する権限を看護師が有すること、の5つである。また、院内ガイドラインとは、手指衛生の適切な使用、クロルヘキシジンによる皮膚の消毒、カテーテル挿入の際のmaximal sterile barrier precaution(マスク、キャップ、無菌手袋、ガウン、大きなドレープを装着)の施行、カテーテルの鎖骨下静脈への挿入、カテーテル挿入時の清潔ドレープの使用を含むものである。この研究により、介入群でのカテーテル関連感染症の発生率は1998年の最初の3ヶ月で11.3件/1000カテーテル日、2002年の最後の3ヶ月で0件/1000カテーテル日であったのに対し、対照群でのカテーテル関連感染症の発生率が1998年の最初の3ヶ月で5.7件/1000カテーテル日、2002年の最後の3ヶ月で1.6件/1000カテーテル日という結果が得られた(P=0.56)(3)。
これより、介入群は対象群と比べて、有意差は無かったもののカテーテル関連感染症の発生率は少なく、2002年の最後の3ヶ月で0件/1000カテーテル日であった。以上より、教育、カートの使用、ガイドラインの遵守、挿入時方法等一連のケアバンドルを実施することによって、カテーテル関連感染症を完全に予防することが可能であるといえる。
(1) 青木眞 レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版:p665-666
(2) Nizam Damani 感染予防、そしてコントロールのマニュアル 岩田健太郎監修:p245
(3) Berenholtz SM et al ” Eliminating catheter-related bloodstream infections in the intensive care unit.” Critacal care medicine. 2004 Oct;32(10):2014-20.
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。