著者献本御礼。こんな本が欲しかったんです!今年一番「読んでよかった」医学書だ(so far)。
眼科と聞くだけで「それはブラックボックス」になっている研修医は多い。眼科研修をしない場合がマジョリティだから、というのもあるが、眼科研修をたとえしたとしてもそれはセッティングが異なるので、「噛み合わない」のである。眼科の外来の後ろで座っていても、オペ室に入っても、それは「眼科の世界にいた」という体験にしかならず、眼科医希望者以外には不全感が残ることが多い(例外があったら教えてください)。
だから、眼科医以外が眼科の勉強をしようと思ったら、プライマリ・ケア、救急といった文脈で学ばなければ意味が無い。あるいは感染症でも膠原病でもよい。アメリカの家庭医学の教科書なんかは眼科についてかなり詳しく書いてあって、ああいうのも勉強になる。日本ではぼくが知る限り類書はなかった。でも、アメリカの教科書はいいんだけど、ビジュアル的にイマイチなんだよね。なので、日米両方の利点を備えた本書は「本当に欲しかった本」だ。
プライマリケア、救急、感染症(あるいは熱病)系の眼科の勉強は楽しく、その診療も楽しい。結膜下出血ぐらいは鑑別し、患者に説明できたほうが便利だし、結膜炎くらいは診療できたほうが良い。全身疾患で眼科医を呼ぶ必要がある場合もしっといたほうがよい。カンジダ血症、ベーチェット病やサルコイドーシス疑い。結核でエタンブトール使ってます(ま、この場合はセッティング次第では自分で色見本使う、ということもあったけど)。なにより、夜中でも眼科医を呼ぶべきケースは絶対に知っといたほうが良い(呼ばなくて良いケースも)。「複視」のようにそもそも眼科の問題なのか、みたいな症状も鑑別できたほうがよい。
本書は冒頭によくある症状からアプローチするアルゴリズムが載っていてとても便利だ。「一過性の飛蚊症は病的ではない」と断じてくれるのもプロの眼科医にしかできない(ぼくらなら、こうは言い切るのは無理だ)。点眼薬の使い分けもカラー写真付きでとてもよい。
できたら、ぜひ続編を作っていただき「内科医版」(サイトメガロとかヘルペスとか結核とか載ってるの)や「小児科版」(トキソとかでてるやつ)も出版してほしい。うちの研修医たちなんて「眼の問題」というととたんに盲目的に「眼科におまかせ」になってるので、少しは漸近してほしい。
こういう本が普及すれば眼科の先生だって得をすると思う。より「話が噛み合う」可能性が高まるからだ。「なんでこんなになるまでほっといたんだ!」とか「なんでこんなことでオレを呼ぶんだ!」というストレスも減ると思う。情けは人のためならず、なんです。
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