注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
糖尿病性足病変の予防とフットケアとその有用性
糖尿病足病変は様々な程度の神経障害と抹消動脈疾患を伴った下肢の潰瘍形成、深部破壊のことを言う。日本の糖尿病患者における足潰瘍の保有率は2%、壊疽の保有率は0.7%である[1]。一度発症すると、身体的予後、生命予後、QOLに重大な影響を及ぼす(特に非外傷性の下肢の切断の2/3がこれに起因する[2])ため、予防が非常に重要である。
リスクファクターの早期認識とその対処は最も重要な予防策のひとつであり、過去の足潰瘍の既往、神経障害、足の奇形、血管病変などがそれに当たる。足潰瘍 (HR = 5.56 ,CI= 1.2-25])、 ankle brachial index <0.9 (HR=2.21, CI=1.11-4.42)、 HbA1C (1%の上昇: HR=1.30 ,CI=1.10-1.54)、神経障害(HR=2.65 CI=1.30-5.44)が下肢の切断のリスクファクターであると報告されている[3]。International Working Group on the Diabetic Footが提唱する分類法は糖尿病性足病変の発症を予測するのに有用である。Group0(神経障害なし)、Group1(神経障害はあるが、足の奇形や末梢血管病変はない)、Group2(神経障害はあり、足の奇形か末梢血管病変がある)、Group3(足潰瘍や下肢末端の切断の既往がある)に分類される。Peterらは30ヶ月間でGroup0,1,2,3はそれぞれ5.1、14.3、18.8、55.8%が足潰瘍に、Group2の3.1%、Group3の20.9%が下肢の切断となったと報告した。予防的フットケアは糖尿病患者、特に神経障害を持つ患者に対して、効果的である。その方法としては、血管病変を悪化させる喫煙をしないこと、足を怪我する可能性のある行動を避ける、毎日足の洗浄と観察をすること、爪を整えること、定期的に医師の診察を受けることが挙げられる[4]。また、足に適切な靴を使用することも効果的であり、Uccioli Lらは足の奇形や足潰瘍の既往のある患者は特注の靴をはくことで新しい潰瘍の発生率は58%から28%へと改善する(P = 0.009)と報告している[5]。
フットケアは糖尿病性足病変のリスクは軽減しうるため、そのリスクのある糖尿病患者はこの予防策を積極的に取り入れていくべきである。
《参考文献》
[1]大江真琴:日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌J.Jpn.WOCM.Vol.16.No.3
[2]Up to Date:Management of diabetic foot lesions
[3]Peters EJ:Effectiveness of the diabetic foot risk classification system of the International Working Group on the Diabetic Foot.: Diabetes Care. 2001 Aug;24(8):1442-7.
[4] Up to Date:Foot care in diabetes mellitus
[5] Uccioli L :Manufactured shoes in the prevention of diabetic foot ulcers. :Diabetes Care. 1995 Oct;18(10):1376-8.
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