注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
感染症内科レポート
—蜂窩織炎の治療法—
—起因菌—
大多数の蜂窩織炎はA,B,C,GおよびF群を含む、β溶血性レンサ球菌によって起こる。黄色ブドウ球菌もまた頻度の高い起因菌である。小児ではインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)による顔面の蜂窩織炎や丹毒も発症しうる1)。
—抗生物質を用いない治療—
局所療法としてはまず患肢の挙上と安静により浮腫を軽減する事が重要である。その上で、冷たい清潔な生理食塩水を用いたドレッシングで化膿性滲出液の除去と局所の疼痛緩和を図る。局所所見の改善は普通緩徐で、1~2週間の治療を要することがある1)。
—抗生物質を用いた治療―
⑴化膿性蜂窩織炎と⑵非化膿性蜂窩織炎に二分される。両者ともに、5-10日(新生児の場合は7-10日間)の治療期間が推奨されるが、重傷の場合は治療期間を延長する。具体的には、患部の発赤、腫脹、圧痛の程度の推移を見て判断する。
⑴化膿性蜂窩織炎(膿汁や浸出液を伴う蜂窩織炎)
化膿性蜂窩織炎において、起因菌の50%以上をMRSAが占め、β溶連菌の割合は5%にも満たないと報告されている2)。よって、培養結果を待たずにMRSAを含めたempiric therapyを開始することが望ましい。β溶連菌に対するempiric therapyは通常不要と考えられる3)。
⑵非化膿性蜂窩織炎(膿や浸出液を伴わない蜂窩織炎)
外来治療としてはβ溶連菌を対象としたempiric therapyが推奨される3)。ほとんどの蜂窩織炎はレンサ球菌と黄色ブドウ球菌が原因のため、ペニシリン耐性黄色ブドウ球菌に有効なβラクタム系の抗菌薬が第一選択薬となる。軽症患者の大部分は、経口薬で治療できる。全身的な毒性が急激に進んだ人または紅斑の痕跡のある患者は、最初から非経口薬で治療を行う。太りすぎの患者(特に病的な肥満やリンパ浮腫の患者)の過小投与は、治療失敗に終わる率が高まる。経口の場合なら、セファレキシン0.5gを6-8時間ごとに投与する。点滴の場合なら、セファゾリン1-2gを6-8時間ごとに行う。最大投与量は12gとする。最初の治療に反応しない患者、全身性疾患の地徴候のある患者、蜂窩織炎の再発を繰り返す患者と、MRSA感染症の既往がある患者などはMRSAのカバーを考える。クリンダマイシン、ST合剤または長時間作用型のテトラサイクリン(例えばミノサイクリンまたはドキシサイクリン)の経口投与が推奨される。リネゾリドは、代用可能な薬品だが、その使用は薬価と潜在的毒性によって制限される4)。
参考文献
Swartz, MN. Cellulitis. N Engl J Med 2004;350:904-912
1) Frederick S. Southwick 感染症診療スタンダードマニュアル : 2007羊土社
2) Moran GJ, et al. N Engl J Med 2006;355:666
3) Liu C, Bayer A, Cosgrove SE, et al. Clin Infect Dis 2011; 52:e18.
4) UpToDate 『Cellulitis and erysipelas』
亀田1ページで読める感染症ガイドラインシリーズ 14蜂窩織炎
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。