行政がホモ(原文まま)の指導をする必要があるのか」と発言したらしい井上県議についてブログでコメントしました。そこで「エイズ患者は早く死ね」発言について毎日新聞の記事を紹介しました。ところが、BASE KOBEの繁内さんにブログの誤りを指摘されました。ここにお詫びするとともに訂正し、繁内さんの文章を許可を得て転載します。
【 拡散希望 】 事実は、報道と異なる場合がある
特に、エイズ関係者の皆さんに知って欲しいこと
神戸市の医師職員
「エイズ患者、早く死ねばいい」 中学の出張授業で発言
神戸市長田区役所の医師で部長級の男性職員(57)が昨年11月、同区の市立中学校で生徒にエイズに関する講義をした際、「エイズになれば、自覚症状がないまま他人にうつす恐れがあるので、(患者は)早く死んでしまえばいい」などと発言していたことが分かった。市は31日、誤った発言で生徒に著しいショックを与えたとして、この職員を減給10分の1(3カ月)の懲戒処分にしたと発表した。
市によると、職員は昨年11月22日、エイズ問題の理解を促す出張授業で生徒約110人を前に講師を務めた際に発言した。 [毎日新聞4月1日]
さて、2006年に神戸で起こった、神戸市部長級医師によるこの不適切発言ですが、この記事は、事実と大きく異なります。しかし、一端報道されるとこの記事が、一人歩きし事実として広がってしまいます。繰り返される不適切発言の教訓にして欲しいので、本件の事実を改めて書きたいと思います。
この神戸市職員は、長田区役所の部長級医師です。かつては、神戸市長田保健所長という立場です。皆さんは、神戸市職員のこの立場の医師が、中学校の授業で、「エイズになれば、自覚症状がないまま他人にうつす恐れがあるので、(患者は)早く死んでしまえばいい」と、本当に発言すると思われますか?
神戸市は、日本のエイズ史上に残るエイズパニックを起こした街で、現在でも少なくともエイズに関わる幹部職員には、この教訓が生きています。もちろん、NGOである私にも生きています。
事実は、次の通りです。
① 2005年11月22日に、長田区内の中学校で性教育の授業を行った。
② 授業の後、ごく少数の生徒に誤解が生じ、全く誤った感想を書いた生徒がいた。
③ 同校の先生が、講師を務めた医師に、お礼とともに事実を書いた手紙を送った。
④ 医師は、お礼の手紙だと思い、開封することなく机の引き出しに入れてしまった。
⑤ 返事のない中学の先生が、放置された状況を市教委に連絡した。
⑥ 市教委は、監察に連絡し、事情聴取を経て、懲戒処分を決定した。
⑦ メディアは、神戸市の懲戒処分の発表を受けて記事を書いた。
事実は、不適切発言があったのではなく、公立中学で、理解力の十分ではないごく一部の生徒に誤解が生じ、このような感想を書いてしまった。そのほかの全ての生徒は、きちんとした感想を書いた。事実誤認による懲戒、報道は、授業後、約5か月の期間を経て確定してしまった。
医師 「HIVは性感染症で、本人の自覚症状がないままに人にうつる」
医師 色々な話説明をする
医師 「HIVは、早期発見できないと、いきなりエイズを発症し死んでしまうこともある」
医師 色々な説明をする
ごく一部の生徒の誤解につながり、授業後、全く予期せぬ、「エイズになれば、自覚症状がないまま他人にうつす恐れがあるので、(患者は)早く死んでしまえばいい」という感想を書いた。
報道を受け、本人は、先ず、保健福祉局(身内)での事情聴取を受けた際には、きちんと事実を伝え、自分の授業での説明不足を認め、手紙を読まずに放置したことを詫びた。しかし、監察の聴取では、どのような聴取があったかVTR等の記録がないので分からないが、事実として不適切発言を認めてしまったため、懲戒を受け、この報道につながってしまった。
保健福祉局の調査でも、同医師の授業を実際に聞いていた教員も、発言はなかったと説明していた訳で、行政監察に問題があった?と推測されるが、ご本人が事態の悪化の責任を認めて同意してしまったため、事実として確定してしまった。
警察でも強引な取り調べが問題になって以来、全面可視化の方向で議論が進んでいますが、行政監察においても同様のことが起こり得るということを、この神戸の、「エイズ患者は、人に移すから死んだほうがいい」発言が、示していると私は考えています。
多くの医師は、人生において、個室内で、そうそう警察や監察に事情聴取されることはありません。威圧的な聴取?に委縮してしまったと、本人や私を含む神戸市の関係幹部職員は、思っています。省みれば、事実を知りながら、この医師を守れなかった責任の一端は、私にもあるように思います。
こうして、今に至るまで、神戸では、「エイズ患者は、人に移すから死んだほうがいい」と発言したひどい医師がいたということが、エイズに対する不適切発言が繰り返されるたびに、事実として引用されてしまうのです。後日、この医師は、神戸市保健福祉局の主査以上を対象にした再発防止研修やNGO支援の募金にも積極的にご協力頂きました。
神戸で第1号の日本人女性のエイズ患者が発表された際にも、この女性は、売春をしていたと報道され、後の裁判で「売春はなかった」と判決が確定しても、未だに誤った裁判以前の報道が引用され、語られることがあります。
今回の兵庫県議による不適切発言の際も、私は地元のNGOとして、事実確認にこだわったのも、神戸では、過去にこのような不幸な事実があったからです。改めて、メディアリテラシー考えさせられるとともに、不適切発言が起きた際は、報道に過剰に反応して、差別反対を声高に叫ぶだけではなく、これをきっかけにして、再発防止の観点から、関係機関と密接に意思疎通を図り、対策を推進するという方向性を確認し、その実現に向けて、具体化するという努力が重要で、その結果が、今回の兵庫県議による不適切を解決する過程で得た、大きな成果となりました。主な成果を記録に残したいと思います。
◇ 神戸地方法務局、兵庫県人権擁護委員連合会
【検討】 人権擁護委員のLGBT(性的少数者)に対する研修会
LGBTの電話相談の際の更なる配意
今年度の人権週間を通じたLGBTの人権啓発の強化
◇ 兵庫県教育委員会
【実施済5・27】 兵庫県立高校の人権担当教諭の人権研修会で、今回の不適切発言について、LGBTの生徒に対するいじめの防止についての内容を盛り込んだ。
【決定】 兵庫県内の学校の校長会、教頭会、人権担当教諭に対するLGBTの人権研修
◇ 神戸市教育委員会
【決定】 10月1日(水)午後に、神戸市立中学校の校長会でのLGBT人権研修
【検討】 小、中、高校の校長会、教頭会、人権担当教諭のLGBT人権研修
◇ 兵庫県疾病対策課 法、指針等に則り、対策を進める
◇ 兵庫県人権推進課 〃
◇ 神戸市予防衛生課 〃
◇ 神戸市人権推進課 〃
◇ (公財)兵庫県人権啓発協会
【検討】 人権啓発誌「きずな」等でのLGBTの人権啓発
その他、法、指針に則り、啓発を進める
◇ 兵庫労働局機会均等室
6月17日の改正男女雇用機会均等法指針の企業説明会で、「同法には、LGBTを含む」の説明をした。今後も、職場とLGBTについては、しっかりと説明し、理解を得る。
◇ 岡山労働局機会均等室
BASE KOBEの内部グループ・コパンの申し出により、7月7日の説明会(外部委託)から、LGBTについては説明をする。以後の説明会等でも、理解の推進に努める。
◇ 愛媛労働局機会均等室
友団であるレインボープライド愛媛の申し出により、説明会には、間に合わないが、今後しっかり啓発に努めると回答を得る。
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