シリーズ 外科医のための感染症 コラム 画像品評会にしてはならない、結核審査協議会
結核は届け出が必要な感染症で、その診療がきちんと行われているか審査するための、結核審査協議会というものがあります。
ところが、これが機能していないところが多い。
ぼくがあちこち見聞きしたところでは、多くの協議会が「画像の品評会」になっているようです。「ここの空洞の壁がどう」とか「ここに散布影があるねえ」みたいな。呼吸器内科、呼吸器外科の先生に、この傾向があります(苦言!)。
ぶっちゃけ、画像なんてどう見えたってよいのです。たしかに空洞の有無は治療のやり方に影響しますが、それ以外はどうでもよい。どんな画像であっても結核の治療の仕方は同じです。右の結核と左の結核で治療薬が変わるわけでもない。
レントゲンで診断されている肺結核のCTを撮ってくれと言われて、岩田は激怒したことがあります。隔離している排菌患者をCTに連れていって、放射線技師に感染のリスクをわざわざ提供するなんて、バカバカしいにも程があります。しかも、その理由が「審査員の先生がCTも見てみたいから」なのです。ふざけるな。
抗結核薬が正しい量で処方されているか、それはきちんとDOTSを使って内服が確認されているか、副作用は発生していないか、患者の症状は改善しているか、リファンピンと相互作用のある薬はちゃんと調整されているか、他の合併症の治療はうまくいっているか(例えば、糖尿病などはちゃんと治療されているか)、、、こういうところをきちんとチェックするのが「審査」です。なのに、こういう議論が全然行われていないところも多いのです(伊藤ら Kekkaku. 2004;79:631-635)。
肺外結核や潜在性結核のフォローにレントゲンや画像を要求してくる審査協議会もいまだに多いです。初回には必要でしょうが、何度もするものではありません。あれも根拠薄弱なので、やめてほしいです。放射線曝露について、これだけ日本中が神経質になっているのに、あまりに無神経です。
「医者が見たいから」という知的興味でCTを撮るケースが日本では多すぎます。患者の診療に寄与しない検査は非倫理的だ、という単純な事実すら共有されていないのは驚きです。医学とは、患者の利益のために行われる目的を持つ学問であり、患者の利益に直結しない、「医者の興味」を満たすための検査は倫理的に許容されないのです。
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