献本御礼
なにしろ、ぼくは感染症屋ですからね。衛生観念を現場に導入したナイチンゲールについては並々ならぬ関心があります。
なので、彼女についてはいろいろ調べていましたが、今までのナイチンゲール像はまさに「偶像」。看護の聖人扱いされて、まったく無謬の存在として祭り上げられている現状に、「うーむむ」な感じでした。
そこででてきたこの「ナイチンゲール伝」。「まんが 医学の歴史」の茨木保先生の最新作だ。
現実のナイチンゲールは家族と折り合いがつかず、病人にも(かなり)冷淡で、他者の言葉に耳を傾けないところもあり、欠点ありありな人物であった。自身も心身に不安定で、一緒に働いていたら「ちょっとなあ」と敬遠するタイプだったと思う。でも、そのような人間的な欠点そのものが彼女を魅力的な人物にしている。そういう視点が漫画の素晴らしいところであり、茨木先生の素晴らしいところでもある。女神でも天使でもない、人間であるナイチンゲールの魅力が本書には満ちている。こういう本が出てきたあたり、またそれが漫画であるあたり、医療の世界も少しずつ成熟しているような気がして、嬉しい読書でした。
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