新しい本がでます。「おわりに」を転載します。
おわりに
本書をお読みいただいた皆さん、どうもありがとうございました。「おわりに」から読む習慣のあなた、はじめまして。
本書は、言いたいことがたくさん詰まった本です。長い間、いつも考えていたことを文字に直しているからです。長い間、いつも主張してきたことを文字に直しているからです。
溜め込んだ主張は、強い口調と熱弁を惹起します。でも、ぼくは敢えて、できるだけクールに、落ち着いた口調で話を続けて行きたいと思いました。少し盛り上げては、下げる。振り上げた拳は、下げる。こみ上げた怒りは、笑いに昇華する。そして、これを45回繰り返し、そして残りの2回でギュッと上げていきたいと考えていました。マラソンのラストスパートのように。能楽の「序破急」のように。
その意図がうまく文章になっているのか。ぼくには自信がありません。少しは意図したとおりにみなさんがお読みになってくださればよいのですが。
通常、本を書く時はターゲットオーディエンス(聞き手)を作ります。「こういう人に読んでほしい」というメッセージの受け手を想定し、そしてその受け手にピッタリとした言葉を選び取ろうとします。
ぼくは敢えて、本書では異なる2つの聞き手を本書に想定しました。ひとつは患者、もうひとつは医療者(とくに医者)です。異なる2つの聞き手に同じ言葉を発し、そこに込められた何重ものメッセージを、異なる受け取り方を「敢えて」してもらうように、計算しました(したつもり)。
この仕掛が、どのくらいうまくいったものかは分かりませんが、願わくば、数人でもよいからそのメッセージが届いていることを願っています。スタンダールが、「To the happy few」と書いたときの気分です(のつもり)。
本書は、長い年月ぼくが考え続けてきた思いが文章になっています。実際の執筆は1ヶ月程度で、それはブログでの連続投稿となって結実しました。毎日、1本、ときにボーナストラックで3本も書きました。苦痛はありませんでした。いつも繰り返し口ずさんできたことを文字にしただけなのですから。
しかし、本心では、ブログを毎日読む読者よりも、[心得1]から[心得47]を一気呵成に読んでくださる方をぼくは、読者として想定しています。そのような仕掛けでリズムを作っています。なので、本書を単行本として、一気呵成に読む媒介として再構築してくださった、神田編集工房の神田綾子さんと講談社の間渕隆さんに心から感謝申し上げます。
史上最高の日本医療が、さらによりよくなるよう、心から祈りつつ
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