<ACTH負荷試験の種類と方法>
ACTHの投与による生体の反応を評価する為には、ACTHの投与量、投与時間、測定期間などの違いによりいくつかの方法が存在し、迅速ACTH試験は副腎不全の診断が考慮される患者に対して行われる。副腎不全が疑われる兆候や症状としては、易疲労性、体重減少、低血糖、低血圧などがあるが、これらの症状は非特異的なため、しばしば診断の遅れや誤診が起こりうる。試験には、ACTHの生物活性を十分に保持する合成ACTH(1-24)(コシントロピン)が用いられる。迅速ACTH試験には、標準的な高用量試験と低用量試験がある。どちらも正常以下の反応を示した場合には副腎不全の診断を確認することができるが、副腎不全の種類と原因を特定するためにはさらなる検査が必要となる。
標準高用量試験は250μgのコシントロピンを静注する方法である。標準高用量試験での基準値は、血清コルチゾール濃度を安静時に測定して、投与後30分、60分のどちらかで18-20μg/dL以上となることである。低用量試験は1μg/1.73m2のコシントロピンを静注する方法である。低用量試験での血清コルチゾール濃度は投与後20分又は30分でより変化しやすく、基準値は17-22.5μg/dL以上である[1]。
<高用量試験と低用量試験の比較>
高用量試験と低用量試験のどちらを選ぶべきか、ということについて、高用量試験は二次性副腎不全の発見に対して限界があるとされるが、低用量試験が優れているかどうかは必ずしも明確ではない。
低用量試験の有用性を支持する意見として、ある研究では、高用量試験は生体内での通常の状態よりもACTHによる刺激が強いので、既に障害を受けている副腎の中で機能が残存している一部分が強い刺激を受けてコルチゾールを分泌するため、低用量試験では陽性となる副腎不全を見つけられない可能性があることを指摘している[2]。
一方、高用量試験と低用量試験の有用性に違いがないことを示す意見として、ある研究では、高用量試験で基準値内であったが、低用量試験で異常値であった26人中23人の中に、治療が行われた患者、副腎不全の臨床症状を示した患者はいなかったことを挙げている[3]。また、副腎不全の診断基準についてのメタアナリシスでは、低用量試験と高用量試験のROCには違いがないことがわかっている。[4]
以上より、高用量試験と低用量試験の比較については意見が分かれている。しかし、内分泌疾患の診断を行う際、病因を特定する為に通常は複数の試験を行うので、これらの試験の正確さの小さな差が、疾患の診断全体に与える影響は小さいと思う。これらの試験の正確さの小さな差によって診断は左右されるべきでなく、副腎不全を疑うような臨床症状や身体所見と試験結果を合わせて解釈し、次に行う検査にどのようなものが必要かを考えることが診断を正確に行う上で必要であると考える。
<参考文献>
[1]Up to Date : Diagnosis of adrenal insufficiency in adults
[2] Broide J, Soferman R, et al. Low-dose adrenocorticotropin test reveals impaired adrenal function in patients taking inhaled corticosteroids. J Clin Endocrinol Metab 1995; 80:1243.
[3] Fleseriu M, Gassner M, et al. Normal hypothalamic-pituitary-adrenal axis by high-dose cosyntropin testing in patients with abnormal response to low-dose cosyntropin stimulation: a retrospective review. Endocr Pract 2010; 16:64.
[4]Dorin RI, Qualls CR, Diagnosis of adrenal insufficiency. Ann Intern Med 2003; 139:194.
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