血球貪食症候群(HPS: hemophagocytic syndrome)(血球貪食性リンパ組織球症(以下HLH: hemophagocytic lymphohistiocystosis)とも)は、マクロファージなどの抗原提示細胞と、NK細胞や細胞障害性T細胞(以下CTLs: cytotoxic lymphocytes)が持続性かつ過剰に活性化することによって起こる高サイトカイン血症に起因する組織障害を首座とする病態である。
この疾患はその原因により大きく一次性と二次性とに分類される。一次性は遺伝子異常を原因とするもので、パーフォリンをはじめとする細胞障害性タンパクなどをコードする遺伝子異常により、NK細胞やCTLsの活性が低下し、マクロファージを効率的に排除できないために、過剰な免疫応答が生じてしまう。人種によって見られやすい遺伝子変異は異なり、日本人にはパーフォリンをコードしているPRF1遺伝子の変異が多いことが知られている。
二次性は様々な原疾患により惹起された炎症反応が増大し、高サイトカイン血症をもたらしたものである。原疾患として重要なものはEBVをはじめとする感染症、悪性リンパ腫をはじめとする悪性腫瘍、若年性特発性関節炎などの自己免疫疾患などがある。
診断に関してはHLH-2004 trialに用いられた診断基準が広く用いられている。以下のいずれかを満たせばHPS/HLHと診断される。
1. HPS/HLHに一致する分子診断が得られる。
2. 以下の8項目中5項目以上を満たす。
1)発熱 2)脾腫
3)2系統以上の血球減少 ・ヘモグロビン9 g/dL未満(4週未満の乳児は10 g/dL未満) ・血小板数10万/μL未満 ・好中球数1,000/μL未満
4)高トリグリセライド血症または/および低フィブリノゲン血症 空腹時トリグリセライド265 mg/dL以上 フィブリノゲン150 mg/dL以下
5)骨髄または脾臓またはリンパ節における血球貪食像があり、悪性腫瘍がない
6)NK細胞活性の低下または消失 17)フェリチン500 μg/L以上
8)可溶性IL-2レセプター2,400 U/mL以上
しかしHLHは早期の治療介入が重要なので、この診断基準を満たすための検査結果がすべて揃うまで待つのではなく、全身状態を勘案して疑わしければ、検査を進めつつ初期治療介入に踏み切るべきである。また血球貪食症候群という名前から誤解されやすいが、血球貪食像の証明は、それのみでは診断の十分条件ではなく、また必須項目ですらないことに留意したい。
【参考文献】
Up To Date: Clinical features and diagnosis of hemophagocytic lymphohistiocytosis
血液専門医テキスト 日本血液学会編 南江堂
Pediatr Blood Cancer 2007;48:124–131 HLH-2004: Diagnostic and Therapeutic Guidelines for
Hemophagocytic Lymphohistiocytosis
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。