テオフィリンの話をした時に、ちょっとジギタリスについても触れました。
ジギタリスはふるーい薬です。オオバコ科の植物から取られた物質で、18世紀から使われています。西洋の薬でも天然素材から作られた薬ってけっこうあります。抗生物質や免疫抑制薬も「土から」とられたものもありますし。
世間では、化学的に合成したものは体によくなくて、自然のものは体によい、なんてデマを飛ばす人もいます。そんなことはありません。フグの毒は天然のものでもやはり毒ですし、化学的に合成した薬だって(患者を選べば)人間に有益です。
人間の体はそんなに賢く出来ておらず、飲んだものでも注射したものでも、天然か化学合成物かの区別なんでできません。天然と養殖ものの鮎や鰻の味を区別するのとはわけが違うのです。それにしても、食べたし、天然の鮎、鰻。あまりに遠し、天然の鮎、鰻。
で、大事なのは自然物か化合物かではなくて、人間によいかどうか。それも、「どの」人間によいかどうか。それだけです。
ジギタリスには強心作用、つまり心臓を大きく動かす力があるため、心臓が動かない病気、すなわち心不全の特効薬として使われてきました。しかし、毒性が多いのが問題で、飲み過ぎるととくによくありません。吐き気、下痢、目の前がチカチカ、頭痛といった症状がでてきます。
そのジギタリスですが、じつは本命の心不全患者にも効果ないんじゃないの?と言われるようになってきており、心不全患者に用いることもほとんどなくなりました(JAMA. 1994 Nov 2;272(17):1361-6. 香坂俊 循環器診療プライマリ・レファレンス 文光堂)。有名なDIGスタディーという研究で、ジギタリスを使っても心不全患者の死亡率が下がらないことが示されたのです(N Engl J Med. 1997;336(8):525.)。
もっとも、ジギタリスを使うと心不全などの入院は減るという研究もありますから、全然効果皆無、というわけではありません(J Am Coll Cardiol. 2001;38(3):806.)。ジギタリスは脈を遅くする効果もありますから、一部の不整脈には用いることも可能です。
とはいえ、一般的な心不全や不整脈にはジギタリスは使いません。テオフィリンもそうですが、ジギタリスも専門家だけが手を出すべき薬だと思います。そして、専門家ほど、こうした薬は普段、使わないものです。勉強してますから。
とはいえ!
天然植物からの薬で心不全が治るなんて幻想?と思いきや、別の候補者が現れています。それはサンザシです。サンザシからの抽出物で、心不全の症状が改善するというメタ分析がでています(Am J Med 2003; 114:665.)。重症患者さんだと突然死も減らすことができる、というデータも出ています(Eur J Heart Fail 2008; 10:1255.)。
天然モノに対する関心は日本だけでなくて欧米でも高く、こういう「自然な」薬を使いたいという患者さんもたくさんいます。研究で治療効果が確立されれば、こういう選択肢もありなのでしょうね。
ちなみに、サンザシを英語でHawthornといいます。ちなみにちなみに、治療を受ける患者が、信頼するお医者さんに期待されていると感じると、病気が良くなることをホーソン効果(Hawthorne effect)といいます。ま、プラセボ効果の一種でしょうか。これは、サンザシとは関係なく、アメリカのホーソン工場というところで期待された労働者のパフォーマンスがよかった、という話からきています。サンザシ自身は、ちゃんと比較試験をしているので、その効果はホーソン効果じゃないようです。わかりづら!
ジギタリスはふるーい薬です。オオバコ科の植物から取られた物質で、18世紀から使われています。西洋の薬でも天然素材から作られた薬ってけっこうあります。抗生物質や免疫抑制薬も「土から」とられたものもありますし。
世間では、化学的に合成したものは体によくなくて、自然のものは体によい、なんてデマを飛ばす人もいます。そんなことはありません。フグの毒は天然のものでもやはり毒ですし、化学的に合成した薬だって(患者を選べば)人間に有益です。
人間の体はそんなに賢く出来ておらず、飲んだものでも注射したものでも、天然か化学合成物かの区別なんでできません。天然と養殖ものの鮎や鰻の味を区別するのとはわけが違うのです。それにしても、食べたし、天然の鮎、鰻。あまりに遠し、天然の鮎、鰻。
で、大事なのは自然物か化合物かではなくて、人間によいかどうか。それも、「どの」人間によいかどうか。それだけです。
ジギタリスには強心作用、つまり心臓を大きく動かす力があるため、心臓が動かない病気、すなわち心不全の特効薬として使われてきました。しかし、毒性が多いのが問題で、飲み過ぎるととくによくありません。吐き気、下痢、目の前がチカチカ、頭痛といった症状がでてきます。
そのジギタリスですが、じつは本命の心不全患者にも効果ないんじゃないの?と言われるようになってきており、心不全患者に用いることもほとんどなくなりました(JAMA. 1994 Nov 2;272(17):1361-6. 香坂俊 循環器診療プライマリ・レファレンス 文光堂)。有名なDIGスタディーという研究で、ジギタリスを使っても心不全患者の死亡率が下がらないことが示されたのです(N Engl J Med. 1997;336(8):525.)。
もっとも、ジギタリスを使うと心不全などの入院は減るという研究もありますから、全然効果皆無、というわけではありません(J Am Coll Cardiol. 2001;38(3):806.)。ジギタリスは脈を遅くする効果もありますから、一部の不整脈には用いることも可能です。
とはいえ、一般的な心不全や不整脈にはジギタリスは使いません。テオフィリンもそうですが、ジギタリスも専門家だけが手を出すべき薬だと思います。そして、専門家ほど、こうした薬は普段、使わないものです。勉強してますから。
とはいえ!
天然植物からの薬で心不全が治るなんて幻想?と思いきや、別の候補者が現れています。それはサンザシです。サンザシからの抽出物で、心不全の症状が改善するというメタ分析がでています(Am J Med 2003; 114:665.)。重症患者さんだと突然死も減らすことができる、というデータも出ています(Eur J Heart Fail 2008; 10:1255.)。
天然モノに対する関心は日本だけでなくて欧米でも高く、こういう「自然な」薬を使いたいという患者さんもたくさんいます。研究で治療効果が確立されれば、こういう選択肢もありなのでしょうね。
ちなみに、サンザシを英語でHawthornといいます。ちなみにちなみに、治療を受ける患者が、信頼するお医者さんに期待されていると感じると、病気が良くなることをホーソン効果(Hawthorne effect)といいます。ま、プラセボ効果の一種でしょうか。これは、サンザシとは関係なく、アメリカのホーソン工場というところで期待された労働者のパフォーマンスがよかった、という話からきています。サンザシ自身は、ちゃんと比較試験をしているので、その効果はホーソン効果じゃないようです。わかりづら!
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