さて、前回に続いて糖尿病の話題です。
糖尿病には1型と2型があります。前者は基本的にインスリン、後者はインスリン以外の治療から始めるのが基本です。
で、2型の糖尿病患者さんの多くは飲み薬で治療を受けています。前述のとおり、糖尿病は大きな血管や小さな血管をボロボロにし、目や心臓や腎臓や足や、体のあちこちにダメージを残します。なので、そういった体のダメージをださないような治療薬が望ましいです。
で、そのような体へのダメージを最小にすると分かっている薬がメトホルミンという薬です(http://care.diabetesjournals.org/content/36/Supplement_1/S4.full)。日本ではグリコランという商品名で導入されました。
しかし、これは日本の薬理行政の長い長い悪癖なのですが、「治療効果は低くても良いから、副作用が出ないように控えめな量で」使われてきました。グリコランも投与量が海外のものよりずっと少なかったので治療効果がいまいちでした。
以前ご紹介したアセトアミノフェン(カロナールなど)もそうでしたね。それで、治療効果が低いので、より副作用が出やすいロキソニンやボルタレンが多用される。あぽーん、わけわかんなーい。
で、最近メトホルミンは「メトグルコ」という商品名で、ちゃんと海外と同じ量が使えるようになりました。めでたし、めでたし、、、
とはいかなかったのです。
じゃ、日本でどのような糖尿病の薬が使われているかというと、これがびっくりなのです。当然、第一推奨薬のメトホルミンでしょ、と思いきや、さにあらず。
IMSジャパンによると、2012年の1月~12月にもっとも売上が高かった糖尿病薬は、
1位 ジャヌビア (約744億円)
2位 グラクティブ (約370億円)
3位 ネシーナ (約300億円)
でした。この3つ。全てDPP-4阻害薬というタイプの糖尿病薬なんです。ええ?メトホルミンはどこ行ったの?実は、この後続くのも別の薬でして、ベイスン、アクトス、アマリール、、、、なんでなんで?(https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/43873/Default.aspx)
ま、これはあくまで売上高で、処方数とは完全には一致していませんから注意は必要です。それにしても、ガイドラインが推奨する薬と、実際に処方されている薬には大きな乖離が見られます。おかしいですね。
日本の医者は、すぐに新薬に飛びつく悪い癖があります。今は病院でも診療所でも院外処方が普通ですし、薬価差益でバカバカ儲けて、、、みたいな昭和の時代ではありませんから、「金儲け」のために医者が新薬を使っている、みたいな陰謀説はぼくは信じません。でも、製薬メーカーの営業にいいように操られている医者が多いのは確かです。製薬メーカーは、薬価の高い薬(すなわち新薬)を売ったほうが儲かります。新薬の開発にはものすごいお金がかかりますから、それを回収しなければなりませんし。
でも、DPP-4阻害薬は出たばかりの新薬ですから、長い期間使った時の安全性や、本当に血管の病気を防いでくれるのか、みたいな情報はまったくありません。新薬開発の時は、薬の短期的な効果は調べられますが、長期的な効果や安全性については調べられず、それは発売してから調査されるのです。つまり、新薬に飛びつくのは危険なんです。
案の定、DPP-4阻害薬は急性膵炎と入院を増やすことが最近の研究で分かりました(JAMA Intern Med. 2013 Apr 8;173(7):534-9)。
ちなみに、ベイスンはアルファ・グルコシダーゼ阻害薬というタイプの糖尿病薬ですが、血管の病気を防ぐ効果を示す研究結果はありません。アクトスはグリタゾンと呼ばれるタイプの薬ですが、心不全の副作用が問題視されています。アマリールはSU剤と呼ばれている薬ですが、低血糖発作や肥満が問題になる薬です。薬効的にはメトホルミンのほうがベターなのです(だから、ガイドラインでも推奨度が高いのです)。
それだけではありません。DPP-4阻害薬は発がん性があるのでは、という懸念が生じています(Endocr Relat Cancer. 2012 Sep 5;19(5):F77-88.)。また、アクトスは膀胱がんのリスクを上げる(Diabetes Care 2011;doi 10.2337/dc102412.)、という疫学調査の結果も発表されました。
日本の糖尿病治療は基本からして間違っています。まず新薬に飛びつくのではなく、安全性や有効性が確立されている、古い薬を優先的に用いるべきなんです。
とはいえ!
じゃ、DPP-4阻害薬を一切使うな、というと、そうではありません。僕自身、(1人だけですが)ジャヌビアを処方している患者さんがいます。
例えば、メトホルミンやアマリールは腎臓の悪い患者さんには使いにくいのが弱点です。糖尿病の患者さんは腎臓を悪くしやすいです。ですから、すでに腎臓が悪くなってしまった患者さんで、インスリン注射が難しい場合、DPP-4阻害薬は選択肢のひとつとして、あり得ます。糖尿病では複数の薬を合わせて使うこともありますから、そういう患者さんに、第2、第3の薬としてDPP-4阻害薬を「かませる」ことも検討に値しましょう。
でも、日本では「いきなり」DPP-4阻害薬を出されている患者さん、DPP-4阻害薬「だけ」を出されている患者さんはとても多いです(なにしろ、売上げトップ独占ですからね)。ベイスン、アクトス、アマリール「だけ」入っている患者さんもとても多いです。これだけ糖尿病患者さんが増えているのに、その治療方法について医者がこんなに不勉強ってのはどうなんでしょうね。
糖尿病には1型と2型があります。前者は基本的にインスリン、後者はインスリン以外の治療から始めるのが基本です。
で、2型の糖尿病患者さんの多くは飲み薬で治療を受けています。前述のとおり、糖尿病は大きな血管や小さな血管をボロボロにし、目や心臓や腎臓や足や、体のあちこちにダメージを残します。なので、そういった体のダメージをださないような治療薬が望ましいです。
で、そのような体へのダメージを最小にすると分かっている薬がメトホルミンという薬です(http://care.diabetesjournals.org/content/36/Supplement_1/S4.full)。日本ではグリコランという商品名で導入されました。
しかし、これは日本の薬理行政の長い長い悪癖なのですが、「治療効果は低くても良いから、副作用が出ないように控えめな量で」使われてきました。グリコランも投与量が海外のものよりずっと少なかったので治療効果がいまいちでした。
以前ご紹介したアセトアミノフェン(カロナールなど)もそうでしたね。それで、治療効果が低いので、より副作用が出やすいロキソニンやボルタレンが多用される。あぽーん、わけわかんなーい。
で、最近メトホルミンは「メトグルコ」という商品名で、ちゃんと海外と同じ量が使えるようになりました。めでたし、めでたし、、、
とはいかなかったのです。
じゃ、日本でどのような糖尿病の薬が使われているかというと、これがびっくりなのです。当然、第一推奨薬のメトホルミンでしょ、と思いきや、さにあらず。
IMSジャパンによると、2012年の1月~12月にもっとも売上が高かった糖尿病薬は、
1位 ジャヌビア (約744億円)
2位 グラクティブ (約370億円)
3位 ネシーナ (約300億円)
でした。この3つ。全てDPP-4阻害薬というタイプの糖尿病薬なんです。ええ?メトホルミンはどこ行ったの?実は、この後続くのも別の薬でして、ベイスン、アクトス、アマリール、、、、なんでなんで?(https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/43873/Default.aspx)
ま、これはあくまで売上高で、処方数とは完全には一致していませんから注意は必要です。それにしても、ガイドラインが推奨する薬と、実際に処方されている薬には大きな乖離が見られます。おかしいですね。
日本の医者は、すぐに新薬に飛びつく悪い癖があります。今は病院でも診療所でも院外処方が普通ですし、薬価差益でバカバカ儲けて、、、みたいな昭和の時代ではありませんから、「金儲け」のために医者が新薬を使っている、みたいな陰謀説はぼくは信じません。でも、製薬メーカーの営業にいいように操られている医者が多いのは確かです。製薬メーカーは、薬価の高い薬(すなわち新薬)を売ったほうが儲かります。新薬の開発にはものすごいお金がかかりますから、それを回収しなければなりませんし。
でも、DPP-4阻害薬は出たばかりの新薬ですから、長い期間使った時の安全性や、本当に血管の病気を防いでくれるのか、みたいな情報はまったくありません。新薬開発の時は、薬の短期的な効果は調べられますが、長期的な効果や安全性については調べられず、それは発売してから調査されるのです。つまり、新薬に飛びつくのは危険なんです。
案の定、DPP-4阻害薬は急性膵炎と入院を増やすことが最近の研究で分かりました(JAMA Intern Med. 2013 Apr 8;173(7):534-9)。
ちなみに、ベイスンはアルファ・グルコシダーゼ阻害薬というタイプの糖尿病薬ですが、血管の病気を防ぐ効果を示す研究結果はありません。アクトスはグリタゾンと呼ばれるタイプの薬ですが、心不全の副作用が問題視されています。アマリールはSU剤と呼ばれている薬ですが、低血糖発作や肥満が問題になる薬です。薬効的にはメトホルミンのほうがベターなのです(だから、ガイドラインでも推奨度が高いのです)。
それだけではありません。DPP-4阻害薬は発がん性があるのでは、という懸念が生じています(Endocr Relat Cancer. 2012 Sep 5;19(5):F77-88.)。また、アクトスは膀胱がんのリスクを上げる(Diabetes Care 2011;doi 10.2337/dc102412.)、という疫学調査の結果も発表されました。
日本の糖尿病治療は基本からして間違っています。まず新薬に飛びつくのではなく、安全性や有効性が確立されている、古い薬を優先的に用いるべきなんです。
とはいえ!
じゃ、DPP-4阻害薬を一切使うな、というと、そうではありません。僕自身、(1人だけですが)ジャヌビアを処方している患者さんがいます。
例えば、メトホルミンやアマリールは腎臓の悪い患者さんには使いにくいのが弱点です。糖尿病の患者さんは腎臓を悪くしやすいです。ですから、すでに腎臓が悪くなってしまった患者さんで、インスリン注射が難しい場合、DPP-4阻害薬は選択肢のひとつとして、あり得ます。糖尿病では複数の薬を合わせて使うこともありますから、そういう患者さんに、第2、第3の薬としてDPP-4阻害薬を「かませる」ことも検討に値しましょう。
でも、日本では「いきなり」DPP-4阻害薬を出されている患者さん、DPP-4阻害薬「だけ」を出されている患者さんはとても多いです(なにしろ、売上げトップ独占ですからね)。ベイスン、アクトス、アマリール「だけ」入っている患者さんもとても多いです。これだけ糖尿病患者さんが増えているのに、その治療方法について医者がこんなに不勉強ってのはどうなんでしょうね。
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