不明熱の予後
不明熱は1991年にDurakらにより患者背景に応じて、古典的不明熱、院内不明熱、好中球減少性不明熱、HIV関連不明熱の4つのグループにわけられている。その中でも今回検討するのは (1) 3週間以内に38.3℃以上の発熱が何度か認められ、3回の外来受診または3日間の入院で原因がわからないもの、と定義されている古典的不明熱である。*1
古典的不明熱の原因としては、非感染性炎症疾患が22%、感染症が16%、悪性腫瘍が7%、その他が4%、最終的に原因がわからなかった患者は51%となっている。また最終的に原因のわからない不明熱患者は1950年代では不明熱全体の9%、1970から80年代では17%であったが、1990年代では30%、2000年代では上記のように51%と増加している。*2
診断のついた不明熱患者の予後はその原因疾患によって左右され、5年間死亡率は悪性腫瘍では52-100%、感染症では8-22%である。それに対して最終的に診断のつかなかった不明熱患者の予後は良く、30-43%の患者で自然軽快がみられ、9-40%の患者において発熱が持続した。また5年間の死亡率は3.2-3.5%であった。*3,*4,*5
つまり古典的不明熱患者の予後は原因疾患によって左右され、最終的に診断のつかない不明熱患者の予後は比較的良いといえる。したがってどれだけ確実に予後に関わってくるような疾患を除外できるかが重要となってくるであろう。ここで考慮すべきは、最終的に診断のつかない患者の割合が増えていることである。不明熱と診断される患者は診断的検査の進歩により確実に減少している。しかしこの割合が増加している原因として考えられるのは、不明熱に対して確定診断がつく前に抗菌薬やステロイドを使用することで診断をつけることが難しくなり、診断が遅れ、対症療法のみで根本的な治療が行われないことである。
また、不明熱の原因には結核や感染性心内膜炎、膿瘍などの治療可能な疾患が多く含まれている。たとえば結核患者に診断前にニューキノロン系の抗菌薬を投与し、これを使用していない場合と比較して適切な治療開始までの日数に大きな差が出たとの報告もある。*6このことに限らず、不明熱の原因を特定しないまま無作為に抗菌薬を使用することは、不明熱の原因検索および治療の妨げとなりうるのである。
したがって最終的に診断のつかない不明熱に関して比較的予後が良いので、いかに迅速に予後の悪い疾患や、見逃されやすい疾患を鑑別、除外していくことが重要だと考える。
【参考文献】
*1 Harison’s principles of internal medicine 18th edition, Longo DL et al., 2012 New York
*2 Up To Date, Approach to the adult fever of unknown origin
*3 Long-term Follow-up of Patients With Undiagnosed Fever of Unknown Origin. Daniel C. Knockaert, MD, PhD., Arch Intern Med. 1996; 156(6): 618-620
*4 A prospective multicenter study on fever of unknown origin; the yield of a structured diagnostic protocol. Bleeker-Rovers CP., Medicine (Baltimore). 2007; 86(1):26
*5 A Retrospective Review of 226 Hospitalized Patients with Fever, Masahi Goto., Internal Medicine vol.46(2007) No.1 17-22
*6 Empiric Treatment of Community-Acquired Pneumonia with Fluoroquinolones, and Delays in the Treatment of Tuberculosis. Kelly E,. Clinical infectious Diseases vol.34 issue 12. 1607-1612
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。