注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
米国では年間20万件以上の血管内デバイス関連の血流感染が発生し、その多くが中心静脈カテーテルや動脈ラインなどのカテーテル関連血流感染(CRBSI; Catheter-related bloodstream infection)である。カテーテル抜去後、72時間以上経過しても血液培養が繰り返し陽性を示す持続性菌血症、発熱などの臨床症状が変化しない場合には、CRBSIの合併症が示唆される。
a) 感染性心内膜炎(IE; Infectious Endocarditis)
心内膜および弁の感染症であり、臨床的には発熱(80%)、新たな心雑音(48%)、心雑音の悪化(20%)、血尿(25%)、脾腫(11%)などが見られる。起因菌としては、GPCが約80%を占め、先進国では黄色ブドウ球菌が最多の原因菌である(20~40%)。診断は臨床像、血液培養、そしてTTEもしくはTEEなどの超音波検査をふまえたDuke criteriaが利用され、感度・特異度ともに80%を上回る。IEはCRBSIの合併症で頻度が高く、また脳合併症のリスクも高めるため、黄色ブドウ球菌や、緑色レンサ球菌などIEを起こしやすい菌が血液培養で同定され、38℃以上の発熱や心雑音が聴取された場合には、IEを疑う。
b) 敗血症性血栓症(Septic Thrombosis)
長期カテーテル留置において合併のリスクが高く、これに伴い敗血症性PE、転移性病変も生じやすい。持続する発熱・菌血症が見られた際には、IEとSeptic thrombosisをまず疑うべきである。ただし、CRBSIに合併する血栓症は約2/3が無症候性ということである。臨床症状としては、腫脹、疼痛、しびれや紅斑や静脈の虚脱などである。診断には圧迫エコーは簡易で、広く使われている(感度>56%, 特異度>94%)。
c) 骨髄炎(Osteomyelitis)
骨髄・骨膜およびその周囲組織の感染症で、黄色ブドウ球菌による細菌性化膿性骨髄炎が最多である。血行性感染の好発部位としては、大腿骨・脛骨など下肢骨の骨幹端部(小児)、胸椎・腰椎(成人)があげられる。90%の症例で見られる感染部位の疼痛、圧痛に加え、熱感、紅斑などの所見が見られることもある。発熱は50%以下の症例でしか認められない。CRBSI患者で、背部痛の訴えがある場合には化膿性骨髄炎を疑う必要がある。診断はCT, MRIでの骨破壊像、膿瘍の発見である。
d) 眼内炎
Candida性CRBSIでの合併が多く、無症状であることが多い(他の病因による眼内炎は激しい眼痛などを伴うことが多い)。無症状性であっても、突然の視力低下、失明を起こしうるため、Candida性CRBSIでは眼科医による眼底検査が必須である。
<参考文献>
1) Mermel, Leonard A., et al. "Guidelines for the management of intravascular catheter-related infections." Clinical Infectious Diseases 32.9 (2001): 1249-1272.
2) Lew, Daniel P., and Francis A. Waldvogel. "Osteomyelitis." The Lancet 364.9431 (2004): 369-379.
3) Boersma, R. S., et al. "Thrombotic and infectious complications of central venous catheters in patients with hematological malignancies." Annals of oncology 19.3 (2008): 433-442.
4) 感染症専門医テキスト
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