注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
エイズの自立支援医療とその問題点について
[自立支援医療の概要]
自立支援医療制度とは、障害を持っている人が、その障害の程度を軽減したり、取り除いたり、進行を防ぐための治療に対して、医療費の自己負担を軽減する制度であり、平成25年4月1日に施行された障害者総合支援法(旧障害者自立支援法)によって規定されている。HIV感染症で自立支援医療制度を利用する場合は、身体障害者手帳を所持している18歳以上の人が利用できる。ただし、18歳未満であれば、身体障害者手帳がなくても利用が可能である。対象となるのは、「抗HIV療法、免疫調節療法等、HIV感染に対する医療」に限られる。
[自立支援医療を受けるには]
自立支援医療を受けるには、まず役所に申請する必要がある。その際、本人が申請を希望していること、身体障害者手帳を持っていること(18歳未満はなくても可)、健康保険証があること、申請に必要な書類(医師の意見書など)がそろっていること、これらが申請に必要な条件である。申請後、1か月程度で自立支援医療受給者証、自己負担上限額管理表が交付されて初めて自立支援医療を受けることができる。
[医療費の自己負担額と自立支援医療を受けることのできる場所]
医療費は、原則として1割負担となる。世帯の住民税額および所得状況に応じて、1か月の自己負担額の上限が決定される。具体的には、生活保護世帯では自己負担額0円であるが、市町村民税を23万5000円以上納めている世帯では一般医療と同じ扱いとなる。ただしHIV感染症は「重度かつ継続」(長期にわたって高額な治療が必要な疾患)とされていて、さらに医療費の助成を受けることができる。
自立支援医療を受けることのできる場所は、受給者証に記載された医療機関でのみであり、また、調剤薬局、訪問看護ステーション等についても、「指定自立支援医療機関」として都道府県から認可を受けている機関でなければ利用ができない。
[自立支援医療の問題点]
一つ目の問題点は、自立支援医療を受けるために18歳以上では必ず必要である身体障害者手帳を取得する際にある。取得する際に必要なものの一つが、4週間の間をおいて2回のCD4の値の検査結果であるが、もし1回目の検査後から治療を初めて2回目の検査でCD4の値がよくなってしまうと、障害者手帳の等級が下がってしまう、もしくは障害者手帳をとれないということが起こり得る。また、ガイドラインでは、妊婦、HIV腎症、HBV重複感染者などは、この4週間という経過観察は医学的に推奨されず、すぐに治療開始をすることが推奨されると書かれている。よって、これらの患者に、1度目の検査から治療を開始すると、障害者手帳が発行されるまでの間の治療費の助成を受けることができず患者に経済的な負担をしいてしまうこと。これらが取得する際の大きな問題点である。
また、自治体による申請方法の違いによって起こる問題も存在する。上記に述べたように、自立支援医療を申請するにあたって身体障害者手帳が必要である。しかし、自治体によっては、前もって身体障害者手帳を取得しておかなければ、自立支援医療制度が適用されるまでの期間、制度を利用できないところがある。これが申請方法の違いによって起こる問題である。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。