MAC症の治療
MAC症は非結核性抗酸菌症(NTM)の一部で、NTMの原因菌としてはMycobacterium avium complex(MAC)が約70%と最多で、次いでM.kansasiiが約20%を占める。
免疫健常者では肺疾患、頸部リンパ節炎や皮膚および軟部組織疾患、免疫不全患者では播種性疾患を引き起こす事が多く、局所症状は熱やリンパ節炎、検査所見では白血球増加などがある。
免疫健常者
MACが免疫健常者に引き起こす症状は肺疾患が代表的で、その他にも頸部リンパ節炎や皮膚軟部組織病変を引き起こす事がある。
肺疾患
リファンピシン、エタンブトール、クラリスロマイシンの多剤併用療法を推奨しているが、多剤併用の有意さに関してのエビデンスはほとんど無く、専門家の経験に依るところが大きい。
肺の繊維化や空洞化、または結節を伴う肺疾患では上記3剤の増量や、3剤にストレプトマイシンまたはアミカシンを加えて投与することを検討すべきである。治療は、培養陰性が少なくとも一年続くまでは継続すべきである。
頚部リンパ節炎
小児に多く外科的治療により第一に治療され、約90%が治癒する。顔面神経損傷の恐れがあったり、手術が美容的に考えにくい場合はマクロライドにリファマイシンかエタンブトールを加えた治療を行う。治療期間に関してのエビデンスは無いが、一般的には3〜6ヶ月と言われている。
皮膚症状
外科的治療と投薬治療の併用となる。外科的治療は膿瘍のドレナージを行い、投薬治療はクラリスロマイシンまたはアジスロマイシンに、フルオロキノロンかデオキシサイクリンかST合剤を加える。
免疫不全者
播種性疾患
クラリスロマイシンとエタンブトールの併用が一般的で、これに第三の薬剤としてリファブチンを加える事が推奨される。HIV患者においてプロテアーゼ阻害薬を使用している場合は、リファブチンとの併用も可能だが、リファブチンの減量をしなければならない(450mg/day→150mg/day)。薬の相互作用でリファブチンの使用ができない時は、アミカチンやフルオロキノロンの投与が考えられるが、これらの有効性を示す研究は無い。IDSAのガイドラインでは、治療を少なくとも12ヶ月継続し、CD4値が100cell/μlを6ヶ月以上超えるまでは行う事を推奨している。
予防投与
末梢血CD4+値が50/μl以下の患者は予防的にクラリスロマイシンまたはアジスロマイシンを単剤投与する。CD4値が100cell/μlを超えて3ヶ月は継続して投与する。
<参考文献>Steven M.Holland「ハリソン内科学第四版」2013年MEDSi p1190~1193
青木眞「レジデントのための感染症診断マニュアル第二版」2008年医学書院p1080~1082
社団法人日本感染症学会「感染症専門医テキスト第一部解説編」南江堂p1049~1051UpToDate
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「Mycobacterium avium complex (MAC) infections in HIV-infected patients」(Judith S Currier, John G Bartlett,Allyson Bloom, 9/28,2012)
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「Overview of nontuberculous mycobacterial skin and soft tissue infections in children」(Andrea T Cruz,Morven S Edwards,Mary M Torchia 1/8,2013)
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